著者
村上 陽平 石田 亨 宮田 直輝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.731-738, 2014-02-15

ボランティアクラウドの活性化には,ボランティアによるサービス提供のインセンティブが重要である.ボランティアで提供される無償サービスは,提供者に利潤がないため,利用者に対する選好に基づく効用によってのみサービス提供が動機付けられる.一方,利用者はコストの制約がないため,必要以上のサービスのQoSを確保する傾向にあり,その結果,利用されないサービスが増加し,提供者の効用を減少させ,サービス提供のインセンティブの低下を招く可能性がある.そこで本研究では,ボランティアクラウド上でサービス提供者の効用が維持されるように,システムの資源とそれを用いて提供されるサービスのQoSを財として扱う,市場モデルに基づくQoS割当て手法を提案する.さらに,シミュレーションによって,提案手法が利用者に対して必要以上のサービスのQoSを確保しないように動機付けを行い,サービス提供のインセンティブが維持されることを確認した.Incentives to volunteer to provide services are significant to activate volunteer cloud. Those volunteer services are motivated by preferences of the service providers because they cannot earn profits from users. While, in using voluntary services, users tend to demand higher QoS (e.g., throughput of the services) than they actually need because there is no cost. As a result, many unused services decrease providers' utilities, which loses providers' incentive to sustain their services. Therefore, to maintain providers' utilities appropriately, we have proposed market-oriented QoS allocation mechanism where users and providers exchange system resources and QoS to improve their utilities. In order to verify whether it motivates users not to demand higher QoS than they need, we ran a series of simulations of our proposed mechanism. We successfully have checked the mechanism maintained providers' incentives.
著者
石田 亨 村上 陽平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.675-682, 2010-06-01
被引用文献数
1

Wikipediaなどの集合知を形成する取組みが,Web上での知識の集積に大きく寄与し始めている.現在進んでいる集合知の形成が,文章,写真,動画などを組み上げていくコンテンツ指向の集合知であるのに対し,本論文で扱うのはサービスを組み上げるサービス指向の集合知である.サービス指向の集合知は,これまでもいくつか試みられているが,Wikipediaのような典型的な成功例はまだ現れていない.本論文ではWebサービスを要素として集合知を形成する枠組みをサービスグリッドと呼び,大学や研究機関などの非営利組織を中心とする公共的なサービスグリッドの制度設計を試みる.特に,サービス提供者,サービス利用者,サービスグリッド運営者という3種のステークホルダーの立場から,それぞれ(1)知的財産権,(2)応用システム,(3)連邦制運営について議論を深める.