著者
横山 伸也 小木 知子 小口 勝也 村上 雅教 鈴木 明
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.262-266, 1986
被引用文献数
12

前報では, コナラ木粉およびアルカリ水溶液を高圧反応容器に入れて, 適当な反応条件下で加圧, 加熱することにより, 約50%の収率で液状生成物が得られることを報告した。本報では, この水相における液化法が, コナラ以外の他の樹種, 樹皮, あるいはバガスなどに対しても, 適用でき得るか否かを調べるために11種の木材, 3種の樹皮およびバガスの液化を行い, 液状油の収率と性質を検討した。すなわち, 広葉樹としてコナラ, ドロノキ, ブナ, 針葉樹として杉, ツガ, スプルース, カラ松, 赤松, 南洋材としてレッドラワン, カプール, カメレレを, 樹皮としてカラ松, 赤松, トド松を用いた。この他に比較のため, 砂糖きびの絞りかすであるバガスも用いた。これらの分析値を <b>Table 1</b>に示した。液化は, 前報で最適と考えられた条件, 温度300°C, 初圧2.0MPa, 滞留時間 (設定温度における保持時間) 0分, 木粉/触媒/水比が5/0.1/30で行った。<br>アセトン可溶分として定義した液状油の収率とCHR (CとHの回収率) は, それぞれ以下の式から求めた。<br>収率(%)=(生成油の重量/原料の重量)×100<br>CHR(%)=(生成油中のCとHの重量/原料中のCとHの重量)×100<br>この結果をまとめて<b>Table 2</b>に示した。表から明らかなように, 木材に関しては, 収率は約50%程度であり, カラ松と赤松がやや低い値を示したが, 総体的には樹種による顕著な相違は認められなかった。バガスはほとんど木材と同じ収率であったが, 樹皮の場合は20-27%と低収率であった。収率と原料の組成との関係について, <b>Fig. 1</b>に示すように原料中のリグニンと収率とをプロットすると, 木材のグループと樹皮のグループに大別されたが, それぞれのグループ内では特に一定の傾向は見られなかった。また, 収率と他の成分との間にも特に傾向は見られなかった。<br>樹皮が木材に比べて低収率なのは, 反応性が低いためではなく一度生成した液状油が repolymerization して固体の residue になるからである。<b>Fig. 2</b>に, 原料中のリグニンと発生するガスおよび固体 residue の量との関係を示した。リグニンが増加すると, 固体 residue も増加するがガス量はほとんど一定である。前報では, 反応時間が長くなるにつれて液状油収率が減少してくる現象が観察されたが, これも同じようにrepolymerizationによると考えられる。事実, Boocock ら (文献12) は, リグニンを多く含む樹皮をフラッシュ的に熱分解し急冷した場合, 通常の数10分の加熱による液化に比べてはるかに収率がまさっており, これは primary oil の repolymerization が阻害されるためであると報告している。