著者
村中 誠司 竹林 由武
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-026, (Released:2021-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では、本邦における遠隔心理支援研究の方向性を明らかにするために、Structural Topic Model(STM)で論文のアブストラクトを解析して海外の遠隔支援研究に関するトピックを抽出した。遠隔心理支援は情報技術などを活用した支援形態であり、電話やテレビ会議システム、テキストメッセージなどさまざまな形で提供されている。遠隔支援は自宅からでも支援サービスが受けられる点で有用であるが、対面支援と比較した遠隔支援の有効性は未だ不明瞭である。遠隔心理支援サービスの拡充を有効に進めるために、まずは遠隔支援に関する検討課題の整理が求められる。遠隔支援に関する578件の論文のアブストラクトをSTMで解析し、ワードクラウドとトピックの出現確率とその経年変化を確認した。その結果、モバイルアプリを活用したうつや不安への支援に関する検討が優先され、その他支援者へのサポートや予防的介入の必要性が示された。
著者
村中 誠司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.715-721, 2021 (Released:2021-12-01)
参考文献数
14

本稿では,質的データの解析手法として,自然言語処理技術として発展を続けている構造的トピックモデル(Structural Topic Model:STM)を紹介する.自然言語とは人間が互いにコミュニケーションを取るための自然発生的な言語である.この自然言語をコンピュータに処理させる技術を自然言語処理という.この自然言語処理の技術の1つとしてSTMがある.STMとは,Latent Dirichlet Allocation(LDA)を用いて,トピックとしてまとめられる潜在変数に基づいて観測された単語を生成する統計的なアプローチである.STMを用いることにより,入力した文書の「意味」のまとまりをつかむことができる.実践例として,夏目漱石の『こころ』を題材にSTMを実施した結果,『こころ』で語られる時勢の遷移による価値観の変化とこの変化がもたらす「わからなさ」を浮き彫りにする結果が示された.扱うテキストの前処理など,実用上の課題はあるものの,STMの今後の臨床研究への活用が期待される.