著者
寺岡 三左子 村中 陽子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.35-44, 2017 (Released:2017-10-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2 7

目的:日本の医療機関を受診した在日外国人の異文化体験の様相を明らかにする.方法:在日外国人22名に受診行動をとおして実感した異文化体験についてグループインタビューを行った.結果:対象者は【受診システムがわかりくい】【自分の病状や主張を正しく伝えるのが難しい】状況の中【医師は十分に対話してくれない】【壁をつくられて向き合ってもらえない】ことを経験し,【患者1人ひとりの文化的背景が注目されない】【拒否する権利を行使できない】と実感していた.また【決まり事の存在や根拠が理解できない】ことから【なじみのない『暗黙の了解』にとまどう】体験をしていた.【看護師の関わりは家族のようで安心できる】と思う一方【病気のことは看護師に頼れない】と認識していた.結論:在日外国人は,言葉の壁,外見に基づく先入観の壁,異文化が理解されないことに直面していた.医療者は,外国人に対する文化的側面への注目の欠如を自覚する必要がある.
著者
村中 陽子 足立 みゆき 吉武 幸恵 鈴木 小百合
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

医療に於いて、患者の安全は最優先課題である。しかし、ヒューマンエラーによる事故報告は後を絶たない。そこで、現実に起きた事故の分析結果を反映させた事例を作成して、危険予知能力の向上を目的としたe-learning用の教材を開発した。開発したシミュレーション型Web教材は、転倒のリスクが潜む患者2事例、メディケーション・エラーのリスクが潜む看護場面3事例から構成される。学習コースは次の特徴を持つ。(1)随所にリスクの判断を求め、判断内容を自ら入力させることにより主体的学習を促す。(2)解説は、学習者の判断の適切性や十分性を考えさせると共に、一般的知識に繋がるように提示している。(3)判断すべきリスクに対して、適切な対処方法を提示している。(4)危険予知に関するQ&Aにより、知識の強化を図っている。(5)最後に、学習を振り返り、その時点の自分のリスク感性についての評価を入力させることにより、その後の学習で自己のリスク感性の高まりを確認できるようにしている。次に、運用評価を新人ナースと看護学生を対象に行い、システム上の「アンケートに回答する」に入力された内容を分析し、その効果をみた。学習の結果、危険予知に関して知識・観察力が不足していることに気付いた、今後このような場面に遭遇したときの対応を考えることができた、危険がひそんでいるところを見逃していることに気づいた、学生の実習にも看護師の仕事にも生かせる教材だと思った、等の評価が得られた。本システムは新人ナースと看護学生の両者にとって効果的であることを確認した。その要因は、シミュレーションを通して、タイムリーなフィードバックが与えられ自己の傾向をリフレクションすることができるプログラム構成であることが大きいと考える。また、勤務シフトに影響されずに学習できるe-learning環境は主要なファクターであると言える。