著者
岡田 裕美 渡辺 賢治 鈴木 幸男 鈴木 邦彦 伊藤 剛 村主 明彦 倉持 茂 土本 寛二 石野 尚吾 花輪 壽彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.57-65, 1999-07-20
参考文献数
19
被引用文献数
5 4

症例は60歳男性で平成9年6月3日腹部不快感を主訴に北里研究所東洋医学総合研究所を受診した。半夏瀉心湯の投与により腹部症状は軽減したが, 半夏瀉心湯の服用は6月より8月まで継続した。同年8月3日より悪寒, 発熱, 倦怠感が出現した。肝機能障害を指摘されたため, 半夏瀉心湯を中止し小柴胡湯を投与した。14日当院漢方科入院となり, 抗生剤, 強力ミノファーゲンCにて経過観察した。入院時の胸部レントゲンにて左上肺野にスリガラス状陰影を認めたため, 小柴胡湯を中止した。肝機能障害は改善したが, 呼吸困難が顕著となり, 捻髪音を聴取するようになった。胸部レントゲン, 胸部CTにて間質性変化を確認し, 9月5日よりPSLの投与を開始した。経過は良好で症状, 画像所見, 検査所見とも改善を認めた。DLSTは小柴胡湯, 柴胡, 黄苓で陽性だった。当初小柴胡湯による間質性肺炎を疑ったが, 小柴胡湯投与前の他院での胸部レントゲン写真でも左上肺野のスリガラス上陰影を認めたため, 本例は半夏瀉心湯が主でさらに小柴胡湯の投与により薬剤性の肝障害ならびに間質性肺炎を発症したものと考えられた。
著者
五野 由佳理 小田口 浩 早崎 知幸 鈴木 邦彦 及川 哲郎 村主 明彦 赤星 透 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.828-833, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
14
被引用文献数
12 9 3

2000年から2009年の9年間に当研究所にて,漢方薬による薬物性肝障害と診断した21症例について検討した。平均年齢55.2 ± 13.4歳で,男性5例,女性16例であった。服用3カ月以内には17例(81.0%)が発症していた。発症時,無症状が11例(52.4%)であり,肝細胞障害型と混合型が共に9例(42.9%)であった。起因漢方薬としては19例と9割以上が黄芩を含む処方であった。DLST施行例は5例のみであり,方剤陽性は1例のみであった。治療としては,原因薬の中止のみで肝障害の軽減および肝機能の正常化を認めたのが18例(85.7%)で他2例は同処方去黄芩にて正常化を認めた。今後,特に黄芩を含む処方の場合に無症状でも,薬物性肝障害の早期発見のために3カ月以内の採血が必要と考える。
著者
福田 知顕 伊藤 剛 村主 明彦 花輪 壽彦
雑誌
漢方の臨床 (ISSN:0451307X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.699-706, 2009-04-25
参考文献数
17
被引用文献数
1
著者
大塚 静英 及川 哲郎 望月 良子 早崎 知幸 小曽戸 洋 伊藤 剛 村主 明彦 花輪 壽彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.93-97, 2009-01-20
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

難治性の顔面の皮疹に葛根紅花湯が著効した3症例を経験したので報告する。症例1は39歳男性。20歳頃より鼻に限局して丘疹が出現し,以後,塩酸ミノサイクリンの内服にて寛解,増悪を繰り返し,いわゆる酒さ鼻となったため,2007年5月に当研究所を受診した。葛根紅花湯(大黄0.3g)を服用したところ,3週間後,鼻全体の発赤が軽減し,丘疹も減少,額・頬部の発赤も消失した。症例2は,56歳女性。鼻,口周囲を中心としたそう痒感を伴う皮疹にて2006年10月に当研究所を受診した。ステロイド外用剤にて軽減するものの中止すると増悪を繰り返していたことより,酒さ様皮膚炎と診断した。葛根紅花湯(甘草0.8g,去大黄)を服用し,ステロイド外用剤は同時に中止したところ,3週間後,全体的に紅斑は鼻と口周囲のみとなり,8週間後には症状はほぼ消失した。症例3は,26歳女性。鼻口唇部の紅斑,アトピー性皮膚炎にて当研究所を受診した。黄連解毒湯にて全体的には症状が軽減するも,鼻口唇部の紅斑は不変であったため,葛根紅花湯(大黄1g)に転方したところ,2カ月後,鼻口唇部の紅斑は消失し,6カ月後には鼻口唇部の色素沈着がわずかに残るのみとなった。葛根紅花湯は,従来,いわゆる酒さ鼻に用いられてきたが,鼻だけでなく,顔面・鼻周囲の皮疹にも応用が可能であると考えられた。