著者
尾森 仁美 細川 宗孝 芝 勇人 漆川 直希 村井 耕二 矢澤 進
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.350-355, 2009
被引用文献数
21

キク(<i>Dendranthema grandiflorum</i>)に感染するウイロイドとしてキクわい化ウイロイド(CSVd)が知られている.CSVd がキクに感染するとわい化などの症状がみられ,切花栽培において大きな問題となる.しかし,これまでに CSVd に強度の抵抗性を持つキクに関する報告はない.本研究では CSVd 濃度を定量し,キク 6 品種から CSVd の濃度上昇が緩慢な品種として'うたげ'を選抜した.次に,'うたげ'を自殖し,得られた後代 67 個体より RT-PCR 法,nested-PCR 法,micro-tissue(MT)direct RT-PCR 法および real-time RT-PCR 法を用いて CSVd 抵抗性を持つ植物体の探索を行った.67 個体のうち,RT-PCR 法で明確なバンドがみられない 9 個体を一次選抜した.この 9 個体のうち,接ぎ木後 5 か月目においても CSVd 濃度が'うたげ'の約 1/240,1/41000,1/125000 倍である 3 個体(C7,A30 および A27)を強い抵抗性を持つ植物体として選抜した.C7 では MT direct RT-PCR 法および <i>in situ</i> ハイブリダイゼーションにより最も若い完全展開葉において CSVd の局在がみられた.A27 および A30 では,植物体全体で CSVd はほとんど検出されなかった.これら 3 個体は CSVd 抵抗性機構の解明に寄与するものと考えられた.<br>
著者
村井 耕二
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報
巻号頁・発行日
vol.40, 2005

2004年7月12日から13日にかけての新潟豪雨, 7月18日から19日にかけての福井豪雨では, 道路, 河川, 家屋の損壊ばかりではなく, 農地にも多大な被害が生じた.両県がまとめた統計によると, 農作物被害は新潟県で13,662ha, 福井県で2,660haに上る.私たち北陸支部では, 豪雨災害後直ちに, 新潟・福井両農業試験場を中心とし, 数名の大学関係者有志が協力して, 水稲とダイズにおける豪雨被害の実態調査と被害発生要因に関する作物学的研究に着手した.ここでは, これらの研究の概要について紹介する.個々の研究の詳細については, 後ほど提出されるであろうそれぞれの原著論文あるいは報告書を参照していただきたい.
著者
村井 耕二
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.321-326, 1997-12-01
被引用文献数
2

Aegilops crassa細胞質はいくつかの日本コムギ品種に対し,短日条件下(14.5時間以下)では可稔であるが,長日条件下(15時間以上)では不稔となる日長感応性細胞質雄性不稔(PCMS)を引き起こす(Murai and Tsunewaki1993.1995)。このPCMSを利用することにより,雑種コムギ育成のための「二系法」が提案されている。本報では,PCMS系統およびF_1雑種におけるAe. crassa細胞質の遺伝的影響を明らかにする目的で,短日条件下の野外圃場において,5系統のPCMS系統と手交配により得られた23のF_1雑種(PCMS系統×稔性回復系統)の農業形質を,それらに対応するコムギ細胞質系統と比較した。PCMS系統ではAe. crassa細胞質の影響により,出穂期の遅れ,一穂小穂数の減少,穂先の不稔による種子稔性の低下,しわ種子の混入によるリットル重の減少と発芽率の低下が認められた(Tables 1,2,3, Fig.1,2)。しかし、PCMS系統は平均して69%の放任種子稔性があり,短日条件下における自殖による維持と増殖は可能である。一方,F_1雑種においても,Ae. crassa細胞質は種子稔性の低下をもたらした(Tab1es 4,5)。種子稔性め低下により,一穂粒数および収量は減少するが,千粒重は増加した。また,リットル重には細胞質の影響が現れなかった.PCMS系統でみられたしわ種子が,F_1雑種に認められなかったことは,Ae. crassa細胞質がF_1雑種の粒の生育(外観品質)に悪影響をおよぼさないことを示す(Fig. 3)。細胞質の影響により種子稔性が低下するにも関わらず,F_1雑種は平均して14%の中間親に対する収量ヘテロシスを示した。収量は千粒重よりも穂数および一穂粒数と強い相関があることが明らかになった(Tab1e 6)。