著者
村井 隆之 Takayuki Murai
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-18, 2007

千島列島と北方四島がソ連軍に不法に占領され、日本人島民一万七千余人の身に危険が迫った。根室町長安藤石典は連合国軍最高司令官に「陳情書」を出しソ連軍に代わってアメリカ軍の島への進駐を要請するが、陳情は功を奏さなかった。だが、彼が「陳情書」で展開した理論は、後に「四島一括返還論」という形を整え、鳩山内閣が妥協的に選択した二島返還論と交差しながら返還運動をリードしていく。ソ連邦崩壊後、社会主義経済から市場経済への移行につまずいた一時期、ロシア人の日本を見る目が少し変わり、四島返還が実現するかに思える瞬間があったが、日本はこの絶好の好機を逸した。プーチン大統領も最初の頃は四島返還論に一定程度理解を示したが、現在はこの問題にすっかり冷淡になっている。原油急騰で経済に余裕が出たことが彼をそうさせている。拙稿では戦後60年間の領土問題をめぐる動きを多角的に分析し、併せて将来を展望する。