4 0 0 0 OA 共生論再考

著者
曽和 信一
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.5-15, 2015-05

本稿では、まず「鶴女房」を素材として、鶴の恩返しと恩送りの問題から出立した。等価交換と密接に関連した「恩返し」と贈与交換と連関した「恩送り」という考え方について、等価交換と贈与交換のバランスをとっていくことの必要性について考察した。それに次いで、「無縁・公界・楽」と「アジール」について論じたが、孤立(死)と関わった無縁社会とは異なり、もうひとつの無縁社会について、網野善彦氏と阿部謹也氏の所論を踏まえて言及したところである。そして、「鶴女房」という民話を題材にして、『夕鶴』という民話劇に翻案した木下順二氏の創作の内実を検討するとともに、現代社会が抱える自然と人間、人間と人間の「共生」というアポリアな課題について考察したところである。
著者
石川 肇
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.6-11, 2009-05

障害者自立支援法の障害程度区分は、介護保険の介護認定の調査項目が、障害者自立支援法の障害程度区分認定に利用されている。その結果、強度行動障害や知的障害者の生活状態が反映されないという結果になっている。Bさんは障害程度区分3と認定され、就労継続B型及び共同生活介護事業へ移行する過渡期として夜間は施設に宿泊し、昼間は離れた作業場へ通うという生活が始まった。3ケ月後には、作業中に頭痛を訴える、作業に行くとき布団から出ないということも見られた。さらに、帰省をすると不安定になり、父親への暴力行為も生じるようになってきた。施設では安定が図れない為、自宅で行動を安定させるという名目で施設利用を拒否された。ソーシャルインクルージョンは個性間共生と訳されるように、人がどんなに重い障害を有していようとも、本人の自己決定・自己選択が何らかの支援を得ながら実現できること、それが本人の生活の中で行われていることが重要であるという考えである。それは、支援する側からの一方的な支援ではなく、自閉症という障害特性と私たちの生活文化とが共生する支援であるべきである。その意味からも、障害者自立支援法における「自立」を批判的に検討し、修正がされるべきと思うのである。
著者
工藤 真由美
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-6, 2011-05

本稿はコンピテンシー概念、とりわけその中で重要な要素となるキー・コンピテンシーの定義について学び、そこから今日の社会の中でより豊かに生きる力、社会を豊かに形成していく力の育成に向けての端緒としての考察である。DeSeCoによると、コンピテンシーの高い人の特性は、異文化での対人関係の感受性が優れ、他の人に対しての前向きな期待を抱いて他者の人間性を尊重し、人とのつながりを作るのがうまい。それをキー・コンピテンシーとしてまとめると(1)自律的に活動する力、(2)異質な集団で交流する力、(3)道具を相互作用的に用いる力、である。自律的に活動するには、大きな展望を持って行動することや、人生計画や個人的なプロジェクトを設計し実行することや、自らの権利や利益、限界、ニーズを守ったり主張する力が必要になる。また、異質な集団で交流するには、他者とうまく関わったり協力したり、対立を処理解決する力が必要である。道具を相互作用的に活用するには、言語、シンボル、テクストや知識や情報、技術を相互作用的に活用する力が必要である。
著者
中川 博
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.31-38, 2008-05

わが国のマスコミは、特に新聞は捜査段階から警察発表に依拠して実名と住所などを詳報する。それによってプライバシーと人権が侵害されることが多い。人権先進国ともいうべきスウェーデンなどの北欧諸国は匿名報道であるため人権が擁護される。後半では新間改革として、夕刊廃止と日曜版の充実、と専門記者制の確立を提言した。
著者
長谷 秀揮
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.20-28, 2013

本稿の目的は、大韓民国(以下、韓国と略記)の保育、なかでも首都ソウル特別市の保育の現状について、2012年9月に実際に現地の保育施設及び子育て関連施設を見学して学ぶことができた多くのことについてまとめ、文献や資料等を活用しながら整理し、また考察を加えて現状を把握、理解して、今後の課題を探ることに資することである。具体的には、現地の保育施設及び子育て関連諸施設を見学させて頂いた際に、施設長や職員の方々から受けた説明や質疑等のやりとりの中で得た様々な学びや情報、そして実際の施設の設備や様子、また保育園児をはじめとする子どもたちや保護者の様子や、さらに現地の保育士への聞き取りから得た情報等を、参考文献や資料等を参照し確認しながら、また必要な補足をして整理しまとめることである。そして日本における保育及び子育てとの比較、検討についても考慮しながら韓国の保育の現状について考察し課題を探ることである。(Hereinafter referred to as Korea) Korea nursery, The purpose of this paper is that the current state of child care capital Seoul, learn to observe the local childcare facilities and child care facilities in September 2012 among them actually it is to contribute to the understanding that the present situation in addition to discussion, to understand and explore the challenges of the future for many things that could be put together, and also organize the literature and other materials while taking advantage of. When I was allowed to tour the various facilities associated with child-rearing and child care facilities local Specifically, fact, information, and learning it is a variety obtained in the exchange of such questions and explanations and has received from the people and staff chief facility and the appearance of the children and parents, including the nursery school children, as well as making sure to reference materials, etc. and references, and information obtained from interviews with nursery local also, how equipment and facilities it is put together and organize the necessary supplement also. It is to explore the issues discussed, taking into account the current state of child care in Korea compared with childcare and parenting in Japan, and also study.
著者
曽和 信一
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.6-23, 2012-05

本稿では、東日本大震災で多くの人名と財産を失い、その震災に伴う東京電力福島第一原発事故により、今なおその被災地域において、復興の目途を立てるには厳しい状況にある。そのような状況にあればこそ、村上龍氏の言う「生きる喜びのすべて」を賭して、復興に向けての「希望」とは何かを考えることから出立した。今回の福島原発事故によって、まさにプロメテウスによって人間に与えられたといわれる原子力という火は、ダモクレスの剣に喩えられるように、一見文明の繁栄をもたらすように見えても、実は不安定なものであることが白日の下に晒されたことについて言及した。それに次いで、将来に希望が持てる人と絶望している人とを引き裂く希望格差社会の抱える問題について、フリーターという社会的立場から切り込む赤木智弘氏の論稿をベースにして考えをめぐらした。そして、古市憲寿氏は社会学的な方法でもって、「絶望の国の幸福な若者たち」のおかれているリアルな状況の一断面を提示した。それらの所論を踏まえて、将来への希望をつなぎ、具体的な展望を紡いでいく社会科学としての希望学について論及した。その希望学に触発されつつ、ルイ・アラゴンとパウロ・フレイレの提起した教育の希望とは何かについて考えた。それに次いで、児童福祉法要綱案という児童福祉法と名づけてた最初の案の中で、子どもの福祉における"歴史の希望"と明記された文言の意味についても考察したところである。
著者
鍛治谷 静 北村 瑞穂 金津 春江 榊原 和子 四條畷学園短期大学保育学科 四條畷学園短期大学ライフデザイン総合学科 四條畷学園短期大学ライフデザイン総合学科総合福祉コース 四條畷学園短期大学ライフデザイン総合学科総合福祉コース
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
no.49, pp.47-57, 2016

四條畷学園短期大学がFD活動の一環として実施した「教員相互による公開授業参観」(2010年度後期~2014年度後期:合計9回実施)について、授業を公開した教員と参観した教員が作成した報告書247枚をテキストマイニングにより分析した結果、その成果と課題は以下の通りであった。報告書には授業担当者・参観者間の対話があり、授業改善に向けての協働が見られたことが成果といえる。一方、授業改善を実現するための具体的な方法や工夫、戦略等をどうすれば得られるかということと、公開授業参観によってそれぞれの授業がどの程度、どのように改善したかを評価するシステムの構築が課題とされた。その評価システム構築のためには「授業改善」の具体的内容についての議論の必要性も示された。
著者
仁平 章子
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.20-25, 2014-05

ヨーロッパ農業の男女共同参画視察を行い、訪問したイタリア共和国のアルト・アディジェ州、南チロルにおける農村女性の活動や農村女性連盟の組織の現況についての報告である。南チロルは、山岳地域であり日本流にいえば中山間地域ということになる。兼業農家が70%を占めており、家族農業経営の多い地域である。農村女性の役割も明確であり、農村女性なくして地域の活性化は難しいと言わしめるような活躍を、農村女性が行っていることが分かった。
著者
村井 隆之 Takayuki Murai
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-18, 2007

千島列島と北方四島がソ連軍に不法に占領され、日本人島民一万七千余人の身に危険が迫った。根室町長安藤石典は連合国軍最高司令官に「陳情書」を出しソ連軍に代わってアメリカ軍の島への進駐を要請するが、陳情は功を奏さなかった。だが、彼が「陳情書」で展開した理論は、後に「四島一括返還論」という形を整え、鳩山内閣が妥協的に選択した二島返還論と交差しながら返還運動をリードしていく。ソ連邦崩壊後、社会主義経済から市場経済への移行につまずいた一時期、ロシア人の日本を見る目が少し変わり、四島返還が実現するかに思える瞬間があったが、日本はこの絶好の好機を逸した。プーチン大統領も最初の頃は四島返還論に一定程度理解を示したが、現在はこの問題にすっかり冷淡になっている。原油急騰で経済に余裕が出たことが彼をそうさせている。拙稿では戦後60年間の領土問題をめぐる動きを多角的に分析し、併せて将来を展望する。
著者
三木 大史 河野 俊寛
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.26-30, 2014-05

言語の発達に遅れがない自閉症者と定型発達者の間でコミュニケーションが成り立つ場合と成り立たない場合の違いについて、その論理の違いを説明するため、数理論理学の手法を用いた数理モデルを提示する。自閉症者と定型発達者の間のコミュニケーションの実例を挙げて、双方の論理を構築した数理モデルの枠組みで具体的に説明する。コミュニケーションが成り立つ場合と成り立たない場合が起こるのは、双方の論理から導かれる理論の相違によるものであり、それは状況と言語の間の関係から生じるものである。このことを利用することによって、両者のコミュニケーション成立のための具体的な方法を説明でき、またその新たな方法を考えることができることを明らかにする。
著者
工藤 真由美
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.18-20, 2009-05

近年子どもの変化が、身体発達、心の発達など様々な点で指摘されるようになってきた。このようななかで、「幼稚園教育要領」や「保育所保育指針」にも示されているように、子どもの遊びの重要性は時代が変わっても変わらないものである。子どもの遊びの重要性を今日の社会環境の中で実現するには、大人の子どもの遊びに対する再考が求められる。まず、自己形成としての遊びは、(1)身体化される遊びであることが重要である。すなわち単に体を動かすだけでなくそのことを通して他者と交わり他者に存在を認められる行為としての身体活動であること。更には(2)身体化された遊びから想像力の世界へとつなげていくことが重要である。すなわち五感を働かせ、そこに無いものや目に見えないものへのあこがれや恐れなど想像力を豊かにすることである。それらは日本の伝承遊びなどに見られるが、まず大人がそのような遊びの価値に気づき、子どもへ働きかけることが重要である。
著者
北村 瑞穂 Kitamura Mizuho 四條畷学園短期大学ライフデザイン総合学科
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
no.49, pp.58-74, 2016

本研究では、四條畷学園短期大学の2009年度、2012年度、2015年度のシラバスを分析し、授業目的と成績評価方法の変化を調査した。授業目的の記載については、テキストマイニングを用いて自由記述の分析を探索的に行った。結果から、2009年度の授業目的の内容は、各学科・コースの特徴が明確ではなく、保育学科の内容が中心となっていた。しかし、2015年度では各学科・コースの特徴が明確になったことが示された。また、成績評価方法については、2009年度から2015年度にかけて、出席への配点が大幅に減少した。さらに、複数の評価項目に対してトータルで配点するような曖昧な配点の仕方が減少し、成績評価の厳密さが高まったことが明らかになった。
著者
榊原 和子 中家 洋子 Kazuko Sakakibara Youko Nakaya
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
no.41, pp.1-8, 2008

介護福祉士は、人のライフサイクルにおけるさまざまな時期や場面、暮らしの支援を業とする。少子高齢化、後期高齢者の増加とともに介護福祉士の役割として、看取りの問題は避けて通ることのできない身近な問題となった。だが、厚生労働省は現行のカリキュラムに、ターミナルケアについての指導指針を明確には示してはいない。本研究は、社会福祉士及び介護福祉士法の改正による新カリキュラムに、「デス・エデュケーション・プログラム」をどのように位置づけていくかを検討したものである。ターミナルケアの概念整理を行い、介護現場のターミナルケアの先行研究から、新カリキュラムの教育にどのような内容を組み込むかを検討した。
著者
曽和 信一
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.7-17, 2011-05

本稿では、まず荘子の説く主要なキー概念のひとつである無用之用と万物斉同とは何かについて触れた。その概念を戦後のわが国の障がい児の「福祉と教育」の草分け的存在である糸賀一雄と、その理念を発展的に継承した伊藤隆二氏の言説と関わって展開した。それに次いで、障害学について考察する前提として、わが国の障害学の形成に影響を与えた青い芝の会とIL運動という障がい者の運動について言及した。そして、障害学について論及していく際に、その理論的な枠組みに大きな影響を与えた先行研究のひとつとして、カルチュラル・スタディーズとは何かについて論じたうえで、その研究の視点から、障害学とは何かということについて言及したところである。
著者
工藤 真由美 Mayumi Kudo 四條畷学園短期大学保育学科 Shijonawate Gakuen Junior College
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
no.40, pp.42-48, 2007

本稿は、いのちが希薄化した今日の社会情勢に鑑み、いのちの重み、大切さを実感できるような、実践的で本質的ないのちの授業を構想することがねらいであり、そのために過去の教育実践を紐解き、そのエッセンスを汲み取ることを主眼とする。横浜の浜之郷小学校の校長、大瀬敏昭氏は自身の闘病から死に至るまでを、その死と直面しつつ生きる心情、絶望と恐れ、希望と勇気を、それらを与えてくれた絵本との出会いというかたちで子どもたちに紹介していく。彼の自己の病状を包み隠さず、平易な言葉で子どもたちに語りかけていく「いのちの授業」の実践記録が、我々に示唆するところは大きい。それは、我々自身が人生から問われたものとして、真摯に日々生きる姿の中にこそ、真の「いのちの授業」が生まれてくるというものであり、また、最後まで学び続け変わることが人間の可能性であり、その点で死は人間にとって成熟する最後のチャンスであるということである。
著者
長谷 秀揮 Hideki Hase
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.39-50, 2012

本稿の目的は、幼児の自信を幼児の内面に育むべき自己有能感ととらえ、保育を受ける幼児の自己有能感に着目し、それを育むことを大切にする保育の在り方について考察することである。そこで、保育園の5歳児クラスに入り参与観察を行い、実際の保育において子どもたちが自己有能感を育み、そして高め深めていくことが出来る保育者のかかわりと援助及び配慮についてその実際を把握。その中で特徴的なエピソードを収集し、また幼児の状況について聞き取り調査を実施した。さらに担任保育士2名に併せて半構造化面接調査を実施して分析及び考察を行った。結果、保育者の一人一人の幼児の状況に応じた意識的なかかわりと援助の重要性が明らかになった。また保育者のプラスのストロークは幼児にとって有効であり、幼児の自己有能感を高めることが明らかになった。そして5歳児クラスの大半の子どもが、それぞれ一層自信を深め主体的かつ意欲的に遊び生活する姿が見られた。This purpose of this paper is a consideration of the modalities of care which fosters it,focusing on children subjected to child care,self competence and self competence infant confident foster children inside of the infant.So,understanding that actually preschool and nursery scool 5 years old child class with participant observation in actual childcare children cultivate self competence,and deepening the increased can can's involvement and aid and consideration.Collect distinctive in that episode and also conducted interviews about the situation of children.Homeroom 2 nursery in conjunction with further conducted semi-structured interviews,surveys,analysis and discussion.As a result,revealed the importance of a conscious relationship with infant nursery individual situations and aid.Preschool plus stroke enabled by young children also became clear that enhance the self competence of young children. And each child class most confidence deep independent and ambitious even 5 years old,play live appearance was seen.
著者
曽和 信一
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 = Annual reports of Shijonawate Gakuen Junior College (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.43-54, 2009

本稿では、障害者自立支援法という名の"自立阻害法"を強いる「この国に生まれたる不幸」と「この病を受けたるの不幸」の"二重の社会的不幸"を繰り返さないために、現在どのようにすればよいのかが問われている。そのために、支援費制度から障害者自立支援法へと移行した現行の法制度を批判的に考察していくことにする。しかし、批判に留まれば障がい者問題の解決に向けての今後の新たな展望を切り開くことは困難であろう。その意味で、新たな法制度の確立に向けて取り組むものとして、DPI日本会議を中心としてその検討作業を進めている障害者差別禁止法(案)の問題について論及したところである。
著者
曽和 信一
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.63-72, 2008

2007年3月に、障がい者の人権侵害を許さず、その人権の保障を国連に加盟する諸国家に課すために、「障害のある人の権利に関する条約(障害者の権利条約)」の署名式が行われ、多くの国が署名した。わが国の政府は同年9月にその条約に署名したが、批准には至っていない。本稿では、障害者の権利条約の成立の過程で、障がい当事者やNGOが積極的に関与し、条約の内容面で大きな影響をもたらしたことの意味するものについて論及した。また、1975年に障害者の権利宣言が出されてから、32年の星霜を重ねて、その宣言内容を拡充深化するとともに法的拘束力をもたせた障害者の権利条約の成立に至るまで、国連の障害者問題への取り組みについて検討した。そして、紆余曲折を経て成立したその権利条約の何が問われているのかを明らかにするとともに、その条約に関連する国内法を整備したうえで、その速やかな批准の必要性について言及した。
著者
三木 大史 河野 俊寛
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.26-30, 2014-05

言語の発達に遅れがない自閉症者と定型発達者の間でコミュニケーションが成り立つ場合と成り立たない場合の違いについて、その論理の違いを説明するため、数理論理学の手法を用いた数理モデルを提示する。自閉症者と定型発達者の間のコミュニケーションの実例を挙げて、双方の論理を構築した数理モデルの枠組みで具体的に説明する。コミュニケーションが成り立つ場合と成り立たない場合が起こるのは、双方の論理から導かれる理論の相違によるものであり、それは状況と言語の間の関係から生じるものである。このことを利用することによって、両者のコミュニケーション成立のための具体的な方法を説明でき、またその新たな方法を考えることができることを明らかにする。
著者
奥田 純
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-5, 2009-05

本稿は2008年の米国大統領選を米国世論の変遷の中でとらえつつ選挙の争点、選出されたオバマの政治家としての資質や選挙中に発信したメッセージに焦点をあてながら、米国の政治状況を考察したもの。大統領制という制度論の観点ではなく、その器に入る大統領の政策と人となりを分析することで今後のアメリカ政治の方向を探った。