著者
村山 光子
出版者
明星大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

【研究目的】平成28年4月「障害を理由とする差別の解消促進に関する法律」が施行され、高等教育機関においても障害を有する学生に対して「合理的配慮の提供」が求められている。しかし、現状は発達障害という特性から、その障害があることに気づかれず放置される学生たちも多く、不適応を起こしている。こうした学生へ合理的配慮に基づいて「何を」「どこまで」行うか検討し、支援体制を整備してくことは喫緊の課題であり、本研究では、これら学生へ早期にアプローチするためのアセスメントを開発し、学生支援体制構築に寄与することを目的としている。【研究方法】①アセスメント開発にあたって、国内を中心とした先行研究を行い、質問紙作成の素地となる項目の整理を行い、予備調査を行った。②全国の国私立大学生876名を分析対象とし、(男性526名、女性340名、不明10名、平均年齢19.3歳(SD=1.5)であった。)質問紙による調査を行った。本研究では、発達障害の特性から生じる大学生活上予見しうる困難に着目し、高橋(2012)の「統合版困り感尺度」を参考にし、さらに発達障害学生支援に携わる臨床心理士10名の臨床経験から大学生活においてつまずきを生じやすい領域として「時間管理」「体調管理」「ストレスコントロール」「学内マナー」「学内ルール」という5領域、計96項目設定した。【研究結果】因子分析の結果因子分析の結果、13因子構造が明らかになり、さらに2次因子のモデルの再検討を行ったところ「時間管理」「健康管理」「社会的枠組」という3因子を確認することができた。これらをもとに各因子の下位尺度得点を平均10、標準偏差3の標準得点に変換し、各領域の評価点としたレーダーチャートに落とし込み、可視化することができた。これにより、学生個人の不適応状態としての各領域の強み・弱みが一目で把握することが可能となり、学生固有の状態に基づいて必要な支援のあり方を示すひとつの指標とすることが可能となった。