著者
岩下 俊治
出版者
明星大学
雑誌
明星大学研究紀要. 人文学部 (ISSN:03881318)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.111-121, 2005-03-20

人間の会話は言葉による伝達によってなされるが、実際には、言葉によって意味されること以外のことも伝達される。例えば、次の発話について考えてみる。A:It's hot, isn't it?(今日は暑いですね。)これは単に知り合いに会って、会話を始める挨拶として発話されたという場合であれば、余り重要な意味はない。いきなり会話を始めるのは唐突なので、前置きのようなものとして発話されたと解釈される。しかし、場合によっては、「暑いからエアコンのスイッチを入れてほしい。」とか、「暑いから何か冷たい飲み物がほしい。」とか、「この飲み物熱くて飲めないよ。」といった意味の伝達と解釈できる場合もある。人間は、相手の発話をその場の状況や文脈に応じて、いつも最もふさわしく解釈しようとする。それによって自然な会話の流れが生まれる。この「最もふさわしく解釈する」にはどのような原則が関係しているのか。Sperber&Wilson(19952)が提唱している関連性理論が、この問題に対する一つの答えを与えている。本研究は、この関連性理論の有効性にっいて検証する。結論からいえば、関連性理論は、発話の解釈という点では、有効である。また、関連性理論が主張する、「人間は最小の労力で最大の認知効果を得ようとする」という原則は、Chomsky(1995)に代表される生成文法が提唱する普遍文法の原則であるEconomyPrinciple(経済性の原則)と一致すると考えられる。即ち、人間の言語活動を含む認知過程(Cognitiveprocess)は、この経済性の原則に従っていると考えられる。本研究を通して以上のようなことが明らかになった。

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著者
小堀 桂一郎
出版者
明星大学
雑誌
明星大学研究紀要. 日本文化学部・言語文化学科 (ISSN:13444387)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.7-11, 2004-03-25
著者
笠原 順路
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

本年度は、自然神学詩や18世紀の詩およびロマン主義詩全般によく見られる「呼びかけ」(Vocative)について研究をした。詩においては通例、呼びかけの語(Vocative)は、呼びかける対象物を出現せしめる。ところが、ロマン派の詩においては、かならずしも対象物を出現せしめるだけではない。ロマン派を代表する(1)Wordsworth,"There was a Boy"、(2)Shelley,"Ode to the West Wind"、(3)Keats,"Ode on a Grecian Urn"、(4)Lord Byron,"The Colosseum episode" from the Canto IV of Childe Harold's Pilgrimageのなかに現れる(広義の)詩人の自画像と解される詩行を見ると、それらがそれぞれの詩人独自の詩論の特徴を反映しながらも、全体として、共通するロマン主義的特質を表していることがわかる。その特徴とは、呼びかけの語によって対象物が顕れると同時に、そこに呼びかける主体または詩人が理想とする自画像もまた顕れてくるということである。これは、18世紀詩からロマン主義の詩へ変化してゆく際の非常に重量な特徴である。ロマン派における自我意識の拡大を如実に反映しているからである。これが、4年間におよぶ自然神学詩をはじめとした18世紀詩からロマン主義の詩へ移行する家庭をたどった本研究の結論である。