著者
水島 健太郎 久須美 雄矢 水池 千尋 三宅 崇史 稲葉 将史 吉川 友理 石原 康成 堀江 翔太 村岡 泰斗 水田 有樹 立原 久義 山本 昌樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0061, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】オスグッド・シュラッター病(OSD)は,大腿四頭筋の過緊張による膝蓋靭帯への牽引力が発症要因とされている。近年,大腿四頭筋の滑走に影響を与える膝関節周囲脂肪体の柔軟性低下が発症要因の一つとして重要視されている。我々は,OSDが健常者と比べて,大腿骨前脂肪体の柔軟性が低下していることを報告した。諸家の報告より,OSDの疼痛に膝蓋下脂肪体(IFP)の柔軟性低下が関与するとあるものの,その詳細は明らかになっていない。そこで本研究の目的は,OSDにおけるIFPの柔軟性について超音波エコー(US)を用いて評価し,膝屈曲ROMとの関係性を検討することとした。【方法】対象は,健常(N)群8例16膝(男性5例,女性3例,平均年齢13.9歳),OSD群8例16膝(男性4例,女性4例,平均年齢12.9歳)の2群とし,IFP治療前後におけるIFP組織弾性,膝屈曲ROMを測定した。IFP組織弾性は,US(ACUSON S3000,SIEMENS社製)のShear Wave Elastography(VTIQ)にて,膝伸展位(E)と120度屈曲位(F120)を各3回測定し,その平均値を算出した。IFP組織弾性を群間比較し,OSD群における治療前IFP組織弾性と治療前膝屈曲ROMとの相関,IFP治療前後のIFP組織弾性および膝屈曲ROMを比較した。IFPの治療は,IFP柔軟性改善操作を5分間施行した。統計処理は対応のあるt検定,マンホイットニー検定を用い,有意水準を5%未満とした。【結果】IFP組織弾性(N群:OSD群)は,Eが2.23m/s:2.30m/s,F120が1.95m/s:3.12m/sであり,OSD群がN群に比べF120においてIFP組織弾性が高値を示した(p<0.01)。OSD群におけるF120IFP治療前組織弾性と治療前屈曲ROMの相関は,-0.48(p<0.05)と負の相関が認められた。IFP治療前後(治療前:治療後)のF120におけるIFP組織弾性は,3.12m/s:2.06m/sであり,治療後に有意な低下を示した(p<0.05)。膝屈曲ROMは,143.8°:150.9°であり,治療後に有意な改善を示した(p<0.01)。【結論】今回の結果より,IFP組織弾性はN群と比べてOSD群が有意に高値を示し,治療前F120 IFP組織弾性と治療前屈曲ROMに負の相関が認められた。これは,IFP柔軟性低下に伴い膝屈曲ROMが制限されることを示唆している。また,OSD群においてIFP柔軟性改善により,膝屈曲ROM拡大が認められた。このことから,IFP柔軟性低下がOSDにおける膝屈曲ROM制限の一要因として挙げられ,IFP柔軟性改善操作がOSDの運動療法として有効であるものと考えられる。