著者
横井 輝夫 加藤 美樹 林 美紀 長井 真美子 水池 千尋 中越 竜馬
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.165-170, 2005 (Released:2005-07-27)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

この研究の目的は,要介護高齢者の基本動作能力と摂食・嚥下障害との関連を明らかにすることである。摂食・嚥下障害の原因の多数を脳卒中が占めるため,脳卒中の有無に分けて検討した。対象は,介護老人保健施設に入所している要介護高齢者で,脳卒中を有する39名と脳卒中を有さない61名であった。基本動作能力は,「座位保持」,「立位保持」,および「歩行」の可否を,摂食・嚥下障害はむせの頻度を用いて評価した。その結果,脳卒中を有する者では,基本動作能力とむせの頻度との間に関連が認められ,「立位保持」,および「歩行」が可能な者は「ほとんどむせない」者が有意に多く,「座位保持」が可能な者に比べむせる者の割合は低かった。一方,脳卒中を有さない者では,2者に関連は認められなかった。しかし,むせる者の割合は,「立位保持」,および「歩行」が可能な者は不可能な者の2分の1程度であった。また,脳卒中を有する者の56%に対し脳卒中を有さない者も23%にむせがみられた。以上より,脳卒中を有する者だけではなく,脳卒中を有さない者においても,基本動作能力が低下している要介護高齢者は,摂食・嚥下障害の予備軍であと考えられた。また,脳卒中を有する要介護高齢者では,「立位保持」の可否が誤嚥の危険性を推測する臨床的に重要な指標であることが示唆された。
著者
石原 康成 水池 千尋 水島 健太郎 三宅 崇史 稲葉 将史 久須美 雄矢 堀江 翔太 立原 久義 橋本 恒 山本 昌樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1028, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】小・中学生の投球障害肩・肘症例の中には,棘下筋(以下,ISP)の筋力低下や筋萎縮が生じている例が存在する。これらISPの機能不全は肩甲上腕関節の不安定性に影響をもたらし,永続的な障害の一因となりうるため,早期発見の重要性が高い。しかし,投球障害肩・肘症例の中でもISPの筋力低下や筋萎縮を生じているものと,生じていないものが存在する。そこで今回,小・中学生の投球障害肩・肘症例におけるISPの状態を明らかにすることを目的として,小・中学生の野球選手を対象として調査を行った。併せて投手と投手以外のポジション(以下,野手)で比較し,ISPの状態の差が下肢タイトネスに由来している可能性を考え,これに関しても分析を行ったので,ここに報告する。【方法】対象は,少年野球団,シニアリトル,中学校野球部に所属している小・中学生の男子66名(平均年齢12.7±2.2歳)。肩もしくは肘に疼痛があり病院を受診した障害群は33名(以下S群,平均年齢12.9±2.3歳),で内訳は投手17名,捕手4名,外野手3名,内野手9名であった。投球障害のない対照群は33名(以下C群,平均年齢12.6±2.2歳)で,内訳は投手13名,捕手1名,外野手6名,内野手13名であった。方法は,対象者に対して,ISP筋萎縮の有無,下肢のタイトネスの指標として両側の下肢伸展挙上角度(以下,SLR),股関節内旋角度(以下,Hip IR)を測定した。SLR,Hip IRは投球側と非投球側に分けて検討を行った。ISP筋萎縮の有無の判定は,ISPの触診と視診により行い,投球側上肢と非投球側上肢で比較し判定を行った。統計解析には,ISP筋萎縮の有無についてはχ2検定,2群の測定値の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】全体におけるISP筋萎縮は,S群では20名(60.6%),C群では9名(27.2%)であり,有意にS群での割合が高かった。投手におけるISP筋萎縮は,S群17名のうち11名(65%),C群13名のうち3名(23%)で,有意にS群での割合が高かった。野手におけるISP筋萎縮は,S群17名のうち6名(35%),C群13名のうち10名(77%)で,両群間に有意差は認められなかった。投手のSLRは,投球側のISP筋萎縮ありで69.3±9.2°,筋萎縮なしで72.8±8.4°,非投球側の筋萎縮ありで71.1±8.6°,筋萎縮なしで71.6±8.3°と,有意差を認めなかった。Hip IRは投球側の筋萎縮ありで17.9±11.6°,筋萎縮なしで26.3±9.8°,非投球側の筋萎縮ありで17.9±11.9°,筋萎縮なしで26.3±10.1°と,両側Hip IRともに筋萎縮あり群が有意に低値を示した。野手のSLRは,投球側の筋萎縮ありで65.7±11.2°,筋萎縮なしで63.6±11.8°,非投球側の筋萎縮ありで64.3±10.8°,筋萎縮なしで64.2±10.6°と,有意差を認めなかった。Hip IR(投球側)は筋萎縮ありで19.7±7.1°,筋萎縮なし20.1±8.7°,非投球側は筋萎縮ありで20.3±9.7,筋萎縮なしで21.9±9.6°と,有意差を認めなかった。【考察】本調査の結果,小・中学生の投球障害肩・肘症例において,ISP筋萎縮は投手に多いことが明らかとなった。次に,筋萎縮のある選手の下肢のタイトネスは,SLRにおいて投手と野手とで両群間に有意差を認めなかったが,Hip IRにおいて投手が有意に低値を示した。投球動作は全身の運動連鎖から成り立つため,上肢帯だけでなく下肢の柔軟性が必要とされる。投手は野手に比べて投球数が多い。ISPはフォロースルー時に加速された上肢の減速のために遠心性収縮を強いられることが要因として考えられた。ISPの負担を軽減するには,フォロースルー時の上肢の減速に非投球側のHip IRが関わる可能性が考えられる。したがって,股関節の内旋制限のある投手は,投球動作の中で生じるISPへの負担が大きい可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】小・中学生の野球選手に対して潜在的に投球障害肩・肘を評価する方法としてISPの筋萎縮の有無が有用である可能性がある。SLRとHip IRは投球障害の機能的検査法である原テストの検査項目でもある。本研究により小・中学生の投手における投球障害肩・肘症例に関してはSLRよりHip IRを優先的に改善する機能強化やアプローチが投球障害をより早期に改善させる一助になる可能性がある。
著者
水池 千尋 石原 康成 堀江 翔太 大谷 豊 水島 健太郎 久須美 雄矢 立原 久義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0271, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】可動域制限を伴う肩関節疾患では,結帯動作が障害され,日常生活動作に支障をきたすことがあるが,その改善に難渋することが多い。肩関節の可動域制限に対するアプローチは徒手療法,物理療法などがあり,近年では機器を用いた運動もセルフエクササイズとして行われている。これまで我々は,機器を用いたディップ運動が肩関節可動域に及ぼす影響について調査し,肩甲上腕関節(glenohumeral joint:以下,GHj)よりも肩甲胸郭関節(scapulothoracic joint:以下,STj)の可動域が拡大すると報告してきた。しかしながら,男女では筋骨格系に違いがあるため,同様の運動を行っても効果に差が生じる可能性が考えられる。そこで,本研究の目的は,機器を用いたディップ運動による肩関節可動域の変化とその性差について検証することとした。【方法】対象は,肩に整形外科的疾患を有さない健常成人20名40肩[男性:11名,女性:9名,平均年齢:33(21-50)歳]とした。運動に使用した機器は,Hogrelディッピングミニ(是吉興業株式会社製)である。運動は,機器のシートに着座した状態で肩のディップ運動を実施した。速さは対象者自身のタイミングとし,回数は40回,負荷は約50N,時間は3分程度であった。運動前後に,肩関節自動挙上角度(以下,挙上角度),第7頸椎棘突起から母指先端までの距離(以下,指椎間距離)を測定した。指椎間距離は結帯動作の指標として用いた。また,上肢下垂位と挙上時における肩甲棘と上腕骨長軸のなす角度(spino-humeral angle:以下,SHA)を測定し,上肢下垂位と挙上時の値の差によって,GHjの可動範囲を評価した。挙上角度とSHAの測定はゴニオメーターを用い,指椎間距離の測定にはメジャーを用いた。統計学的処理は,運動前後の比較には対応のあるt検定,男女間の比較には対応のないt検定を用いた。なお,有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には事前に研究の目的や手順を十分に説明し,口頭にて同意を得た。また,本研究は所属する職場の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】男女の比較では,運動前のSHAは男性:103.9±12.7°,女性:106.8±12.9°であり,女性が大きかった(p<0.05)。その他の値に差はなかった。すなわち,女性ではGHjの可動範囲が大きかった。運動前後の比較では,挙上角度は男性:運動前158.2±8.5°,後162.3±7.4°,女性:運動前157.5±8.3°,後160.3±7.8°であり,男性は運動後に拡大した(p<0.05)が,女性は差が無かった。すなわち,男性で挙上角度が拡大していた。指椎間距離は男性:運動前150.9.±57.9mm,後137.5±52.7mm,女性:運動前120.8±37.7mm,後111.1±38.0mmであり,男女ともに短縮した(p<0.05)。すなわち,性別によらず結帯動作は改善していた。SHAは男女とも運動前後で差はなかった。すなわち,性別によらずGHjの可動範囲は変わらなかった。【考察】本研究の結果,男女の比較では運動前の挙上角度は差が無く,SHAは女性が大きかった。すなわち,女性の方がGHjの動きが大きく,STjの動きが小さいことが示された。三次元CTを用いた解析から,上肢挙上時に女性では肩甲骨の上方回旋角度が小さいため代償的に肩甲上腕運動での動きが大きくなることが報告されており,本研究もこれを支持する結果となった。次に,運動後に男女とも指椎間距離は短縮し,挙上角度は男性のみ改善がみられた。ディップ運動では僧帽筋上部線維,菱形筋,前鋸筋,上腕三頭筋に強い筋活動がみられたという報告があり,これらの筋の反復収縮と相反神経抑制によって肩甲骨周囲筋の柔軟性の向上が引き起こされたと考えられる。女性の挙上角度は変化が無かったが,120°以上の挙上では肩甲骨の動きに加え,胸椎伸展運動の連動が必要とされる。元々胸郭と肩甲骨の可動性が低く,筋力が小さい女性にとって,本研究の負荷設定では,肩甲骨と胸椎周辺の可動性の改善度が少なかったと推察された。以上から,ディップ運動を実施する際は,男女の特性に適した負荷設定と効果判定を行うことで,より効果的な介入ができる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】男女の筋骨格系の違いによってディップ運動の効果に差が生じることが示唆された。このことから,男女の特性に適した負荷設定を行うことが効果的な介入方法に繋がる可能性を見出したことに意義があると考えられる。
著者
堀江 翔太 水池 千尋 水島 健太郎 三宅 崇史 稲葉 将史 久須美 雄矢 石原 康成 立原 久義 山本 昌樹
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0411, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに】足部の動的アライメントの異常は,有痛性下肢疾患の原因の1つとされている。足部アライメント異常によるToe Outの蹴り出しでは,上行性運動連鎖により膝がKnee Inを呈することが知られている。このようなアライメントを呈する症例への理学療法に対して,体幹や股関節筋力の強化によって治療効果が得られた先行研究も散見される。しかし,日常診療においては,足部筋力が低下している症例を多く経験する。我々が渉猟した限りでは,足部の動的アライメント異常と母趾筋力の関係について不明な点が多い。そこで本研究の目的は,足部の動的アライメント異常と母趾筋力の関係を明らかにすることである。【方法】対象は,下肢に整形外科的疾患を有さない健常成人17人33足を,立脚後期にToe Outで蹴り出しを行う群(以下,TO群)14人14足(男性:7人7足,女性7人7足,平均年齢:33.3±5.2歳)と,立脚後期にToe Outで蹴り出しを行わない群(以下,C群)19人19足(男性:12人12足,女性:7人7足,平均年齢:29.5±5.3歳)の2群とした。これら2群は,動的アライメントで分類し,対象者の裸足歩行をデジタルビデオカメラで撮影し,立脚後期での蹴り出し時の足部の状態で判断した。除外条件は膝伸展位での足関節背屈角度が5°以下,フットプリントより外反母趾,扁平足や凹足などのアライメントを呈する者とした。筋力の測定肢位は,端坐位で股関節と膝関節を90°屈曲位とし,母趾屈曲および母趾外転筋力をハンドヘルドダイナモメーター(マイクロFET2,日本メディック社製)を用いて測定した。母趾屈曲筋力は,足関節底背屈中間位と最大底屈位での2条件とし,母趾外転筋力が足関節底背屈中間位で測定した。対象者に方法を十分に習得させた後,3秒間の最大努力で2回測定し,平均値を体重で除した値を採用した。統計処理には,足部の動的アライメントによる比較を対応のないt検定を用いて行った。なお,有意水準は危険率5%未満とした。【結果】足関節底背屈中間位での母趾屈曲筋力は,TO群が0.08±0.03kgF/kg,C群が0.11±0.03kgF/kgであり,TO群が有意に低値を示した(p<0.05)。足関節底屈位での母趾屈曲筋力は,TO群が0.04±0.01kgF/kg,C群が0.06±0.02kgF/kgであり,TO群が有意に低値を示した(p<0.05)。母趾外転筋力はTO群が0.03±0.01kgF/kg,C群が0.04±0.02kgF/kgであり,2群間に差を認めなかった。【考察】足部の動的アライメント異常の原因は,局所や全身の問題など様々な要因がある。本研究の結果,TO群の母趾屈曲筋力は,足関節底背屈中間位と足関節底屈位の両条件において低値を示した。TO群では,デジタルビデオカメラで撮影した歩行において蹴り出し時の母趾伸展が少ないことが確認できた。歩行では,蹴り出し時に強制的に母趾が伸展されるため,母趾屈筋力が必要となる。Toe Outの蹴り出しでは,母趾の伸展角度が少なくなることから,母趾屈筋群の活動が低下することが予想される。すなわち,母趾屈筋群の筋力低下がある場合,Toe Outによる代償的な蹴り出しを行う可能性がある。また,TO群における長母趾屈筋や短母趾屈筋の筋力低下は,これを反映した結果であると考えられる。母趾外転筋の筋力は,動的アライメントによる差を認めなかった。これは,Toe outによる母趾外転筋の活動に与える影響が少ないことを示唆しているものと考えられた。本研究は,母趾のみを対象とした研究であり,足趾および足部の筋力や機能,脛骨の外捻角度や体幹・股関節機能など,動的アライメント異常を呈するその他の要因との関連性は不明である。今後,これらについても検討していく予定である。【理学療法学研究としての意義】立脚後期にToe Outでの蹴り出しを行っている例では,母趾機能が低下していた。すなわち,足部の動的アライメントの異常は,足部機能の低下が原因の一つとなっている可能性が示唆された。このことから,足部の動的アライメント異常に対する理学療法において,足部の局所的な評価や治療の必要性を示したものと考えられる。
著者
秋山 陽子 西田 裕介 重森 健太 水池 千尋 金原 一宏 兵永 志乃 池谷 直美 福山 悟史 川久保 知美
雑誌
リハビリテーション科学ジャーナル = Journal of Rehabilitation Sciences Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
no.8, pp.19-33, 2013-03-31

研究報告【はじめに】H-Ex.の実施状況と、動機づけの関連性を検討した。【対象】外来患者24名(平均年齢61±17歳、男性7名、女性17名)とした。【方法】質問紙調査法にて、H-Ex.の実施状況と動機づけの強さおよび個人属性を調査した。動機づけの強さの測定には『Behavioral Regulation in Exercise Questionnaire-2』を一部修正して使用した。【結果】実施状況と動機づけの強さには、有意な相関はなかった。痛みが強いほど、H-Ex.を行わないという有意な相関があった。家族数が多いほど、内発的調整スタイルの得点が低いという負の相関があった。H-Ex.を行わない日が多い群と外的調整スタイルの得点の高い群との間に、有意な分布の差があった。就労形態と、同一視的・取り入れ的調整スタイルとの間にそれぞれ有意な分布の差があった。【考察】H-Ex.の実施状況と動機づけの強さの関係については、両者間に有意な相関がなかった。その要因として、介入そのものが動機づけを強くしたこと、実施状況調査の時期や期間が実施結果を良好にしたのではないかと考えた。
著者
水島 健太郎 久須美 雄矢 水池 千尋 立原 久義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-152_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】足関節外果骨折の術後は,創部周囲の腫脹・癒着により足関節の背屈制限が生じやすい.近年,超音波エコー(US)の普及により,運動時の軟部組織の動態を確認できるようになってきた.しかし,足関節外果骨折術後の足部周囲の軟部組織がどれくらい硬くなるのかは十分報告されていない.そこで今回,足関節外果骨折術後の足部周囲の軟部組織の柔軟性をUSを用いて測定したので報告する.【方法】対象は,足関節外果骨折術後9例(男性4例,女性5例,平均年齢60.9歳)とし,健側と患側の足部周囲軟部組織の組織弾性を,US(AIXPLORER,コニカミノルタ社製)のShear Wave Elastography用いて評価した.腹臥位足関節中間位で,Kager’s fat pad(KFP),長母趾屈筋(FHL),ヒラメ筋(SU),短腓骨筋(PB)の各筋を10回測定し,その平均値を算出した.また,ゴニオメーターを用いて足関節背屈ROMを測定した.検討項目は,各筋の組織弾性を健側と患側で比較検討した.また,各筋の組織弾性と足関節背屈ROMの相関を求めた.なお検査測定は,十分練習を行った同一者が施行した.統計処理は対応のあるt検定,ウィルコクソン検定,ピアソン相関係数を用い,有意水準を5%未満とした.【結果】KFP組織弾性(健側:患側)は,2.01 m/s :2.83 m/s,FHL組織弾性は,2.92 m/s:3.42 m/s,SU組織弾性は,2.89 m/s:4.02 m/s,PB組織弾性は,3.08 m/s:4.33 m/sであり,全ての筋において,患側が健側に比べ有意に高値を示した(p<0.05).また,足関節背屈ROMとの相関は,KFP組織弾性と-0.61(p<0.01),FHL組織弾性と-0.56(p<0.05), SU組織弾性と-0.53(p<0.05)の負の相関が認められた.【結論】今回の結果より,足部周囲の軟部組織弾性は,健側と比べて患側が有意に高値を示し,KFP,FHL,SU組織弾性と足関節背屈ROMに負の相関があることが明らかとなった.これは,これらの筋の柔軟性低下に伴い背屈ROMが制限されることを示唆している.今後は,各筋の柔軟性改善操作にて背屈ROM が改善するかを調査し運動療法として確立していきたい.【倫理的配慮,説明と同意】大久保病院倫理委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを説明し,同意を得ることができた場合のみ対象として計測を行った.
著者
木村 朗 水池 千尋 大城 昌平 吉川 卓司 甲賀 美智子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D1191, 2005

【目的】近年、生活習慣病を有す高齢片麻痺患者の維持期では新たに動作障害に応じた身体活動量の増加が求められている。生活習慣病は生理学的指標のバイアスになる。そこで、本研究は、生理学的指標を用いずに動作の加速安定性から定常状態を評価するための条件を探った。リズムに合わせた動作指導時の時間要因と、3方向の動作軸の空間要因が動作時間と加速度へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として調べた。<BR><BR>【方法】介護老人保健施設に通所する測定協力に同意が得られたCVA発症後5年以上経過した年齢が70歳から83歳の片麻痺患者5名(男性3名、女性2名)をランダムに選んだ。ステージは上肢4、手3、下肢4。手順は被験者にイス座位で加速度センサー(microstone、MVPA305)を正中位に両手保持し、肘を90度屈曲位にしたまま左右に体幹を回旋するよう指示した。次いで、ラルゲットテンポ(66Hz)の <I>リンゴの唄</I>を頭部後ろから聞き取らせ、60秒間、唄のテンポに合わせ左右に最大回旋するよう指示した。5ms時からの最初の5動作と最後の直前の5動作49510ms時までのxyz軸方向の反復動作時間(加速度のピークからピークまでの時間:PPD)とピークの加速度を測定した。初期vs定常期(時間要因:TF)と前後-上下-水平:xyz方向要因(空間要因:SF)がPPDおよび加速度に及ぼす影響をANOVAで調べた。<BR><BR>【結果】開始初期のPPD(平均±SD単位はms)、 前後:1047.5±105.2、上下:2076.2± 54.5、水平:2071.2±59.7定常状態期のPPD前後:1072.5±441.9、上下:2093.7±45.8、水平:108.70+/-51.2。開始初期の加速度(平均±SD単位はm/sec<SUP>2</SUP>)前後:5.7±.6、上下: 8.8±.9、水平:14.6±.9定常状態期の加速度、前後:6.7±.9、上下:8.7±1.2、水平:15.0±1.0。ANOVAの結果:PPDのTF:ns、SF:p<0.001。Tukeyは95%CIがx-y:-1268.0から-781.9、y-z:-248.0から238.0(ns)、x-z:-1273.0から-786.9であった。加速度のTF:ns、SF:p<0.001。Tukeyは95%CIがx-y:-3.6から-1.4、y-z:-9.6から-7.4、x-z:1.4から3.6。nsを除き、p<0.01。<BR><BR>【考察】被験者は意識的に体幹の回旋とリズムを合わせようと指示され、肘が体幹に固定されているため上下の動きで随意的努力が少なく済み、水平の動作では四肢の片麻痺でも体幹が両側支配で、座位での体幹回旋は、四肢に比べ麻痺の影響が少ないためにリズムに合わせることが可能であったと考えられる。注意を促さない前後の動きで加速が定常期に増えるのは動作の継続を可能にするための身体効率を高める何らかの自動制御機構の関与が加わる可能性が考えられる。<BR><BR>【まとめ】座位体幹回旋エアロビクス運動では定常状態に至るにつれ前後方向の加速度はリズムを反映しないで増加する。この<B>揺れ増加現象</B>に注意して指導する必要があろう。
著者
水島 健太郎 久須美 雄矢 水池 千尋 三宅 崇史 稲葉 将史 吉川 友理 石原 康成 堀江 翔太 村岡 泰斗 水田 有樹 立原 久義 山本 昌樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0061, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】オスグッド・シュラッター病(OSD)は,大腿四頭筋の過緊張による膝蓋靭帯への牽引力が発症要因とされている。近年,大腿四頭筋の滑走に影響を与える膝関節周囲脂肪体の柔軟性低下が発症要因の一つとして重要視されている。我々は,OSDが健常者と比べて,大腿骨前脂肪体の柔軟性が低下していることを報告した。諸家の報告より,OSDの疼痛に膝蓋下脂肪体(IFP)の柔軟性低下が関与するとあるものの,その詳細は明らかになっていない。そこで本研究の目的は,OSDにおけるIFPの柔軟性について超音波エコー(US)を用いて評価し,膝屈曲ROMとの関係性を検討することとした。【方法】対象は,健常(N)群8例16膝(男性5例,女性3例,平均年齢13.9歳),OSD群8例16膝(男性4例,女性4例,平均年齢12.9歳)の2群とし,IFP治療前後におけるIFP組織弾性,膝屈曲ROMを測定した。IFP組織弾性は,US(ACUSON S3000,SIEMENS社製)のShear Wave Elastography(VTIQ)にて,膝伸展位(E)と120度屈曲位(F120)を各3回測定し,その平均値を算出した。IFP組織弾性を群間比較し,OSD群における治療前IFP組織弾性と治療前膝屈曲ROMとの相関,IFP治療前後のIFP組織弾性および膝屈曲ROMを比較した。IFPの治療は,IFP柔軟性改善操作を5分間施行した。統計処理は対応のあるt検定,マンホイットニー検定を用い,有意水準を5%未満とした。【結果】IFP組織弾性(N群:OSD群)は,Eが2.23m/s:2.30m/s,F120が1.95m/s:3.12m/sであり,OSD群がN群に比べF120においてIFP組織弾性が高値を示した(p<0.01)。OSD群におけるF120IFP治療前組織弾性と治療前屈曲ROMの相関は,-0.48(p<0.05)と負の相関が認められた。IFP治療前後(治療前:治療後)のF120におけるIFP組織弾性は,3.12m/s:2.06m/sであり,治療後に有意な低下を示した(p<0.05)。膝屈曲ROMは,143.8°:150.9°であり,治療後に有意な改善を示した(p<0.01)。【結論】今回の結果より,IFP組織弾性はN群と比べてOSD群が有意に高値を示し,治療前F120 IFP組織弾性と治療前屈曲ROMに負の相関が認められた。これは,IFP柔軟性低下に伴い膝屈曲ROMが制限されることを示唆している。また,OSD群においてIFP柔軟性改善により,膝屈曲ROM拡大が認められた。このことから,IFP柔軟性低下がOSDにおける膝屈曲ROM制限の一要因として挙げられ,IFP柔軟性改善操作がOSDの運動療法として有効であるものと考えられる。
著者
大城 昌平 藤本 栄子 小島 千枝子 中路 純子 池田 泰子 水池 千尋 飯嶋 重雄 福永 博文
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ハイリスク児の出生早期からの発達と育児支援の方法を開発し、フォローアップシステムを構築することを目的とした。その結果、出生早期からの親子の関係性を視点とした"family centered care"によるディベロップメンタルケアの取り組みが、児の行動発達、両親の心理的安定、育児の自信につながることが示された。また、そのような取り組みには、関係専門職者に対する、ディベロップメンタルケアの理論的実践的な教育の機会を提供し、低出生体重児・早産児のケアの質を改善することが急務の課題であると考えられた。