- 著者
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村方 多鶴子
- 出版者
- 埼玉県立大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2012-04-01
【目的】重度の精神障がいを持つ親のもとで生育した子どもの主観的体験と、看護者に対して期待していたニーズについて明らかにする。【研究方法】研究対象者は、重度の精神障がいを持つ親のもとで生育した子どもで、精神障がい者家族会の責任者から紹介を受けた。60分程度の半構造化面接にて、精神障がいを持つ親と同居していて心配・負担だったこと、看護者に対して期待した援助などについて調査した。インタビュー内容から逐語録を作成し、質的記述的に分析した。所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果および考察】研究対象者は男女各1名で、年齢は30代前半と40代後半であった。障害を持つ親は両者とも母親で、60代と70代前半であった。研究対象者は、二人とも現在主介護者となっていた。そのプロセスは、①母親の入院経験はなく比較的生活が安定していた子ども時代、②両親から自立し自分のペースで暮らしていた成人期、③母親の精神症状悪化を病気とは気づかず、母親の突然の入院から主介護者となった時期の3つに分かれた。介護者は自分を介護者と見なすのではなく、その状況ですべき責任を担う(Polkki et al,2004)と言われているが、主介護者となった背景には、親に対する愛情だけでなく、病気に関する知識が不十分であり、親元を離れていたために精神症状に気付かない時期があり、症状を悪化させたという自責感も影響したと考えられる。また、精神障がいを持つ親の子どもは、親のネガティブな状況を話しても、批判するつもりはない(Fjone et al, 2009)というように、子ども時代の母親との体験をポジティブに意味付けし、経済的にも精神的にも自立した後に老年期の親の病状悪化に直面し、親に対する感謝と後悔、自責感から主介護者となったと考えられる。