著者
窪田 聡 遠藤 路子 林 里紀 高橋 博徳 村松 嘉幸 腰岡 政二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.97-102, 2013 (Released:2013-04-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3

根域環境制御システムを用いて根域温度を調節することによって,鉢植え花きの生育制御が可能かどうかを明らかにするために,バーベナとゼラニウムの生育と開花に及ぼす根域温度の影響について検討した.バーベナを根域温度15,20および25℃で栽培したところ,地上部の生育は25℃で著しく促進され,植物体の乾物重は15℃の約1.5倍に増加した.ゼラニウムを冬季に最低気温8℃とし,根域加温温度を無加温,13および18℃で栽培した.その結果,根域温度が18℃では地上部の生育と着蕾率および小花数は明らかに増加し,植物体の乾物重は無加温に比べて約2倍に増加した.以上のことから,根域環境制御システムを利用して根域温度を制御することにより,植物の成長を制御できることが明らかとなった.
著者
窪田 聡 村松 嘉幸 大島 秋穂 小田部 桃子 菅田 悠斗 腰岡 政二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.95-103, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

住宅用床暖房パネルと空気熱源式ヒートポンプ冷温水システムおよび発泡スチロール製の断熱鉢トレイを組み合わせて新しい根域温度制御装置(N.RECS)を開発した.N.RECSは根域の加温と冷却の2つのモードを持っている.加温モードでは,気温が10°Cを下回っても根域温度を約25°Cに維持することが可能で,冷却モードでは気温が40°Cを上回っても約23°Cに冷却することが可能であった.冬季に矮性ダリアの生育・開花に及ぼす根域加温の影響について検討した.根域加温を行わずに最低気温を15°C設定にした対照区に比べて,最低気温を12°C設定または無加温として根域を24°C加温した12°C/24°C区と無加温/24°C区では生育が促進された.また,12°C/24°C区と無加温/24°C区のエネルギー消費量は,対照区に比べて金額ベースで34%と69%それぞれ削減された.夏季にフクシアの生育に及ぼす根域冷却の影響について検討した.根域冷却を行わない対照区では48%の株が枯死したが,20°Cまたは23°Cに根域を冷却するとすべての株が健全に生育した.これらのことから,N.RECSは通年にわたって花苗の生育制御に活用できることが示された.
著者
村松 嘉幸 河野 寿紀 窪田 聡 腰岡 政二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.267-272, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
13
被引用文献数
3

夏季の高温により生育と開花が抑制されるミニシクラメンを用いて,根域冷却が生育・開花に及ぼす影響について検討した.根域温度を20°C,23°C,26°Cに調節した区と冷却を行わない無冷却区を設けた.各区の根域温度は設定温度の±1~2°Cの範囲に制御され,無冷却区の平均最低温度と最高温度はそれぞれ約25°Cと28°Cであった.栄養生長は無冷却区と比較して23°Cで促進された.20°Cの開花は10月中旬から始まり,花数は20日後には約7輪/株となった.開花は根域温度の上昇とともに遅れ,20°C,23°C,26°Cおよび無冷却区の開花株率は,それぞれ82,60,44および20%となった.しかし,花蕾数は23°Cで約65個/株と最も多くなり,20°Cおよび無冷却区に比べて,それぞれ25個および10個増加した.これらのことから,根域を23°Cまで冷却すると栄養成長および花芽形成が促進され,20°Cまで冷却すると開花が促進された.