- 著者
-
村田 俊也
橋爪 和夫
- 出版者
- 金沢工業大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
本研究の目的は、剣道7段は、なぜ剣道8段の動きの情報を全く入手(入力)できないのかという事象を解明することである。剣道8段は、7段相手に全く情報を発しないで動作を発現しているのか、あるいは、7段は8段の発現している動作を入力できる技能がないのか、という問題を解決することを意図している。2021年度は当初計画していた運動生理学とバイオメカニクスに基づく実験ができなかった。それで、これまでに積み重ねてきた武道学的な視点に基づく自己点検について再検討した。前年度までは、2019年度報告に示した総数53項目(生理学1、運動学35、心理学2、戦術4、剣道学11)について自己点検と自己評価そして省察を行ったところ、ほぼ確定した。本年度はこれらの自己点検が部分練習の学習サイクルとなった結果、全体練習ができていないという仮説を設定した。従って、一旦自己点検の項目から離れて、武道学や剣道で用いられる「自然体」という考えで本研究課題を探求することを意図した。剣道で用いられる「自然体」の概念は、明確にされていない。ゲシュタルト心理学は「人間の精神を、部分や要素の集合ではなく、全体性や構造に重点を置いて捉える」と説明している。「全体性の考察に力学の概念を取り入れた」概念は、自然体という用語で武道の技能を表現することと類似していると考察した。自然体で打突する剣道の技能は「53の項目を念頭に置きながら打突する」技能とは概念的に乖離していると考察した。なお、剣道で問う「中心線」についてはバイオメカニクス的な実験研究が必要であり、次年度の課題とすることとした。