著者
牧野 俊一郎 村田 幸平 岡村 修 中込 奈美 吉田 哲也 玉井 正光
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.2711-2715, 2014 (Released:2015-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
4

乳癌の大腸への転移は非常に珍しいとされている.今回われわれは,乳癌術後19年目に大腸転移を認め切除を行った1例を経験したので報告する.症例は71歳女性.19年前,乳癌に対して他院にて乳房切除術施行.再発なくフォローされていたが,便潜血陽性となり,下部消化管内視鏡検査を施行したところ横行結腸に2型病変を指摘された.生検にてGroup5,tub2の診断となり,原発性大腸癌として当院紹介となり,腹腔鏡下横行結腸切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検査所見から乳癌からの大腸転移と判明した.術後8カ月で肝単発再発し,化学療法を行っている.乳癌の既往のある患者では,術後長期間経過していても,転移や再発の可能性があることを念頭に置く必要がある.
著者
田中 千恵 水野 樹 西村 潤一 松田 圭二 村田 幸平 岡 志郎 吉田 好雄 吉田 陽一郎
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.391-400, 2021 (Released:2021-06-29)
参考文献数
90
被引用文献数
1

本稿では,プレフレイル高齢大腸がん患者に対する外科治療について述べる.高齢大腸がん患者に対して外科治療を行う際は適切な術前評価と術中評価が重要である.術前の身体機能低下・認知機能低下・低栄養・併存症・多剤併用・骨格筋量の低下は術後合併症や死亡のリスク要因となる.術中は輸液量制限や目標思考型輸液管理に基づいた輸液管理と脳波モニタリングによる厳密な麻酔深度管理を行い,低体温症や皮膚,筋肉,神経,循環障害を予防することが術後合併症の低減につながる.しかし,リスク因子の程度と術後合併症の関連に関する質の高い論文は存在しない.またプレフレイル患者に対して標準治療が困難である場合,手術侵襲の減弱により手術治療が許容されるかどうかに寄与するデータも存在しない.これらの問題点を解決するためには,網羅的な高齢者総合的機能評価のデータの蓄積と解析が必要である.