著者
高橋 希 鈴木 忍 酒井 兼司 東 久弥
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.2, pp.100-106, 2015 (Released:2015-02-10)
参考文献数
31

近年,上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療において,EGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の有効性が示されている.アファチニブは,EGFR(ErbB1)のほか,HER2(ErbB2)やErbB4のチロシンキナーゼ領域のアデノシン三リン酸(ATP)結合部位に共有結合することで,それらのリン酸化を阻害する不可逆的ErbB受容体ファミリー阻害薬である.非臨床研究においてアファチニブは,EGFRのほか,HER2およびErbB4のチロシンキナーゼ活性を選択的かつ持続的に阻害し,EGFR受容体を発現する種々の腫瘍細胞に対する細胞増殖抑制効果およびマウス担がんモデルに対する腫瘍増殖抑制効果を示した.国内外で実施されたEGFR-TKIを含む化学療法未治療のEGFR遺伝子変異を有する進行NSCLC患者を対象とした臨床試験では,アファチニブは標準化学療法に比べ,無増悪生存期間(PFS)の有意な延長を示したほか,健康関連の生活の質(QOL)の評価において,肺がん関連症状の改善効果を示した.アファチニブによる有害事象としては,主に下痢,発疹/ざ瘡,口内炎,爪の異常などが認められたが,その多くは支持療法,休薬/減量により管理可能であった.以上から,アファチニブの有効性,安全性が確認されたことにより,我が国では,2014年1月に「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」に対する治療薬として承認された.
著者
久米 真 米沢 圭 東 久弥 森 茂 米山 哲司 二村 学 山本 秀和 白子 隆志 岡本 亮爾 横尾 直樹
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.2181-2185, 1994-09-01
被引用文献数
4

小腸ポリープ107個中2個に悪性化を認めた Peutz-Jeghers 症候群 (以下, PJ 症候群) の1例を経験したので報告する. 症例は25歳の男性. 7歳時, 口唇指趾の色素沈着と直腸ポリープを認め PJ 症候群と診断された. 1990年7月4日腸重積発作を起こし, 緊急開腹術を施行し小腸のほぼ全長にわたるポリープの存在を確認した. 1991年2月19日開腹下内視鏡的ポリープ切除術を施行した. 小腸の2箇所より内視鏡を挿入し径約 5 mm 以上のポリープ107個すべてを摘出した (このうち1個のみ小腸切開下に摘出). 組織学的にその大部分は Peutz-Jeghers Polyp の典型像を呈していたが, 内2個 (径26mm, 7mm) の表層に一部癌化を認めた. PJ 症候群は悪性化の危険性を有する. 自験例からポリープの径にかかわらず予防的にすべてのポリープを摘出すべきであることが示唆された. 摘出には開腹下内視鏡的ポリープ切除術が有用であった.
著者
福井 貴巳 横尾 直樹 吉田 隆浩 田中 千弘 東 久弥 白子 隆志 北角 泰人 岡本 清尚 加藤 達史 山口 哲哉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.68-72, 2001-01-01
被引用文献数
6

敗血症性ショックを合併した超高齢者の虚血性大腸壊死症例に対して, 結腸大量切除術を施工し救命しえたので報告する.症例は102歳の女性.主訴は嘔吐と腹痛, 来院時, すでに敗血症性ショック状態にあり, 絞扼性イレウスの術前診断のもと, 全身麻酔下に緊急開腹術を施工した.結腸肝彎曲部より下行結腸まで広範な結腸壊死を認めたため, 上行結腸からS状結腸まで広範囲結腸切除術を施工した.病理学的検索にて, 虚血性大腸壊死と判明した.脱水, ショック, 高齢, 過大侵襲手術などの危険因子のため, 術後早期は極めて不安定な循環動態, 呼吸状態を呈したが, 無事救命しえた.この好結果は, 術直後からの血液浄化療法(PMX~【○!R】)の実施や, S-Gカテーテル留置による綿密なモニタリングのもと, 十分な循環血液量の維持を主眼とした全身管理によりもたらされたものと考えられた.