著者
糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ 馬場園 哲也 金崎 啓造 宇都宮 一典 古家 大祐 綿田 裕孝 繪本 正憲 川浪 大治 深水 圭 久米 真司 鈴木 芳樹 和田 淳 和田 隆志 岡田 浩一 成田 一衛 小岩 文彦 阿部 雅紀 土谷 健 加藤 明彦 市川 和子 北谷 直美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.797-805, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
20

わが国では2014年に改訂された糖尿病性腎症病期分類が広く用いられてきた.最近では,高齢化や肥満者の増加,糖尿病や高血圧症に対する新規治療薬の開発などを背景に,糖尿病患者に合併した腎臓病が多様化していることが指摘されている.そこで糖尿病性腎症合同委員会では,腎症病期分類を再度改訂する必要性を検討した.現時点では,アルブミン尿や推算糸球体濾過量に基づく2014年分類を変更する必要性を示唆する新たなエビデンスが発出されていないことから,今回の改訂では2014年分類の基本的な枠組みは変更しないこととした.ただし,日本腎臓学会のCKD重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し,病期名を「正常アルブミン尿期(第1期)」,「微量アルブミン尿期(第2期)」,「顕性アルブミン尿期(第3期)」,「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」,「腎代替療法期(第5期)」へ変更した.
著者
久米 真 米沢 圭 東 久弥 森 茂 米山 哲司 二村 学 山本 秀和 白子 隆志 岡本 亮爾 横尾 直樹
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.2181-2185, 1994-09-01
被引用文献数
4

小腸ポリープ107個中2個に悪性化を認めた Peutz-Jeghers 症候群 (以下, PJ 症候群) の1例を経験したので報告する. 症例は25歳の男性. 7歳時, 口唇指趾の色素沈着と直腸ポリープを認め PJ 症候群と診断された. 1990年7月4日腸重積発作を起こし, 緊急開腹術を施行し小腸のほぼ全長にわたるポリープの存在を確認した. 1991年2月19日開腹下内視鏡的ポリープ切除術を施行した. 小腸の2箇所より内視鏡を挿入し径約 5 mm 以上のポリープ107個すべてを摘出した (このうち1個のみ小腸切開下に摘出). 組織学的にその大部分は Peutz-Jeghers Polyp の典型像を呈していたが, 内2個 (径26mm, 7mm) の表層に一部癌化を認めた. PJ 症候群は悪性化の危険性を有する. 自験例からポリープの径にかかわらず予防的にすべてのポリープを摘出すべきであることが示唆された. 摘出には開腹下内視鏡的ポリープ切除術が有用であった.
著者
久米 真司 古家 大祐 前川 聡
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.2074-2081, 2013-08-10 (Released:2014-08-10)
参考文献数
15

加齢と共に多くの臓器で機能障害が出現する.腎臓も例外ではなく,多くの人で加齢と共に腎機能低下が生じる.加齢の要素単独で末期腎不全へ進行することは稀であるが,加齢に伴う腎機能障害は,生活の質の低下や医療介入の制約を生み出す.現在わが国では,栄養状態の改善ならびに医療技術の発展により寿命が大幅に延長しているが,一方で,このような健康寿命を如何に保証するかという新たな課題に直面している.この課題に対する数多くの研究成果として,加齢に伴う腎機能障害に関わる分子機構が徐々に明らかにされつつある.高血圧や糖尿病などの臨床的要素に加え,近年,angiotensin IIや酸化ストレス,Klotho,Sirt1,オートファジーといった腎局所の分子機構が腎老化と関連するという興味深い知見が得られている.本稿では,これら老化関連分子と腎老化との関わり,その治療標的としての可能性や問題点を概説させていただく.
著者
伊藤 登茂子 浅沼 義博 白川 秀子 久米 真 ITO Tomoko ASANUMA Yoshihiro SHIRAKAWA Hideko KUME Makoto
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.29-36, 2009-10-01

膵癌の治療成績は不良であり, 現在においても, 膵頭部癌切除例の生存期間の中央値は12.3ヶ月, 5年生存率は13.0%と低値である. 浸潤性膵管癌は膵癌の大多数を占めるものであるが, 同診断により手術を受けたのち, 19年が経過したサバイバーに, 病気との向き合い方についてインタビューする機会を得た.1) 疾病の理解, 2) 病気に対する自分自身の構え, 3) 病気への対処行動と予防行動について, その語りを健康生成論的視点で分析したところ, 首尾一貫して健康のベクトルを健康軸に向けるよう, 自分はこれでは死なないと信じて, 病名告知がない状況で自ら文献を調べて疾患を理解し, 回復手段を考え, 便秘やガス貯留が無いように代替療法を取り入れるなど, 主体的かつ積極的に過ごしてきたことが分かった. また, 入院中の生活で感じたさまざまな不合理や, 職業的背景や価値観を尊重した対応がされなかった際に感じた疎外感については, 今後のケアで留意すべき示唆となった.\nThe prognosis of invasive ductal pancreatic cancer is not satisfactory even at present. The median survival is reportedly 12.3 months, and 5 year survival rate is as low as 13.0% in patients who underwent pancreatoduodenectomy.We interviewed a pancreatic cancer patient who survived for more than 19 years following pancreatoduodenectomy, with regard to the way he coped with the disease. We have analyzed the interviewfrom a salutogenic standpoint such as 1) understanding of the disease, 2) his own preparedness, 3) manageability and preventive approach to the disease.As the result, we realized that he maintained a proactive and positive attitude : he had a strong sense of coherence to maintain his health, he believed that he would not die from the disease, he examined the literature to comprehend the disease (since informed consent had not been achieved sufficiently in those days), and he managed constipation and abdominal distension well by resistance training, special supplements and devised abdominal massage. Furthermore, he sometimes felt irrational and alienated during his hospitalization, because his value judgment fostered through his long career of journalist was not respected during his treatment. This should be given consideration in future.