著者
"妹尾 勝利 西本 哲也 石浦 佑一 東嶋 美佐子"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.217-226, 2005

"本研究の目的は,10名の健常成人と1名の右上腕切断者を対象として,上腕能動義手の手先具操作時の筋活動量と酸素摂取量及び自覚的身体疲労度を,利き手と非利き手及び肘継手の屈曲角度の違いによって測定し,義手非装着側の腋窩部の痛みと身体疲労の要因を検討することであった. 義手操作時間は9分間とし,操作中の筋活動量と酸素摂取量を測定した.筋活動は義手装着側と義手非装着側の三角筋前部線維,大胸筋,前鋸筋に貼り付けた表面電極より導出し,積分して比較筋活動量(%MVC:Maximum Voluntary Contraction)とした.自覚的身体疲労度は,Visual Analog Scaleにて調査した.実験は,一人の被験者に4回(肘継手屈曲50度で1回目が非利き手 → 利き手,2回目が利き手 → 非利き手,肘継手屈曲110度で3回目が非利き手 → 利き手,4回目が利き手 → 非利き手)行った. 健常者の%MVCは,利き手と非利き手及び操作時期によって有意差はなかった.義手装着側と義手非装着側の前鋸筋の%MVCは,大胸筋と三角筋より大きかった(p<0.05).肘継手屈曲110度の%MVCは,屈曲50度より大きかった(p<0.05).酸素摂取量と自覚的身体疲労度は,利き手と非利き手及び肘継手の屈曲角度の違いによって有意差はなかった.右上腕切断者の%MVCは,義手装着側の前鋸筋,義手非装着側の大胸筋が大きかった.酸素摂取量は,肘継手屈曲110度では操作時間の経過とともに大きくなった.肘継手屈曲110度での自覚的身体疲労度は屈曲50度より大きかった. 切断者における身体疲労は,切断側肩関節周囲筋の筋力低下の影響が示唆された.義手非装着側腋窩部の痛みは,前鋸筋と大胸筋の作用によるハーネスの圧迫が要因になっていることが示唆された."