著者
東木 龍七
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.2, no.8, pp.659-678, 1926-08-01 (Released:2008-12-24)
被引用文献数
1 5

之を綜合して簡單に示せば次の二項になる。 1.貝塚分布線を伴ふ溪谷の存在する陸地の一部は極めて近い過去に於て沈降し、其溪谷には海水が侵入しだ。 2.其溺れ谷の灣頭は一度は必ず貝塚分布極限線附近の溪谷底に存在した。 III 奮海岸線決定の方法近い過去に於ける陸地の沈降に因つて生じだ溺れ谷の海岸線即ち舊海岸線は次の順序によつて定むることを得る。 1.貝塚分布線を件ふ溪谷は陸地の沈降に因る奮溺れ谷と決定する。 2.其灣頭海岸線の位置は貝塚分布極限附近の溪谷底とし、其形状は其處の谷底を横斷する直線で示す。 3.灣側海岸線は溪谷底側線で示す(地形的現象によう)。 IV 陸地沈降の地質的證跡既に記載した陸地沈降の證跡に加うるに最近地質的證跡が發見せられた。即ち大下正十三年十月に發表せられた地質調査の結果に據れば(復興局地質調査東京地質調査第一囘報告)、東京群の貝塚分布域の溪谷に、陸地の沈降に因つて海水の侵入したことが地質的に立證せられた。其詳細は辻村助教授によつて論ぜられて居る(本誌第一巻第二號一九三頁-一九五頁)から記載は省く。