- 著者
-
東郷 秀雄
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2006
研究の目的は、イミダゾール型及びアンモニウム型イオン液体反応場の中で、中性の活性種である炭素ラジカルを発生させ、イオン液体という高極性・高粘性反応場の中での中性炭素ラジカルの化学的挙動を精査し、一般的な有機溶剤との反応性の相違を比較するとともに、その特性を合成化学的に反映させることにあります。そこで、金属亜鉛を用いた1,3-ジハロプロパン類のシクロプロパン環への変換反応を種々のイオン液体反応場で検討した結果、イミダゾリウムNTf_2塩、イミダゾリウムPF_6塩、及びイミダゾリウムOT_S塩では殆ど反応しないが、イミダゾリウムCI塩及びイミダゾリウムBr塩のイオン液体を用いると、シクロプロパン化反応が1,3-ジヨード、1,3-ジブロモ、及び1,3-ジクロロプロパン何れの基質においても効率的に進行することが分かった。つまり、イオン液体を用いることにより、金属亜鉛から1,3-ジハロプロパンへの電子移動が促進され、不活性な1,3-ジクロロプロパンでも効率的に反応することが分かった。これらの知見をもとに種々の2,2-ジ置換及び2-モノ置換1,3-ジハロプロパン類のジ置換及びモノ置換シクロプロパンへの効率的3-exo-tet環化反応を確立した。また、イオン液体固定型ヨードベンゼンを触媒とし、イオン液体中でケトンのmCPBAによるα-トシロキシケトンへの変換反応、及び続くチアオミドとの反応によるチアゾールへの直接変換反応を確立した。イオン液体固定型ヨードベンゼンを含むイオン液体反応場は再生再利用が可能である。