著者
金子 克美 加納 博文 東郷 秀雄 小西 健久 大場 友則 田中 秀樹 石井 千明
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、単層カーボンナノホーン(SWCNH)、ナノ細孔性配位高分子(MOF)の壁の柔らかさの特徴とそれら物質のナノ構造へのクリーンエネルギー貯蔵について研究した。上記物質以外のナノ細孔性カーボンも含めて超臨界水素吸着性を総合すると、室温での吸着量は1wt.%以下であるが、77K程度になると10wt.%程度のナノ構造炭素があること、吸着水素の密度は20Kでの液体水素密度に近いものもあることを明らかにした。硝酸と硫酸の混酸処理によりSWCNTのバンドル構造を制御すると0.7nm以下のウルトラミクロ孔が増え、水素吸着量がほぼ2倍にまで増加することを見出した。SWCNTについてはアルコールを吸着すると、チューブの同心方向の振動(RBM)が大きな影響をうけラマンバンドが高波数側にずれること、分子吸着がその振動に与える圧力効果は約1万気圧相当であることを発見した。モデルケースとして窒素分子の場合にナノスケールの曲率の符号が単分子層吸着構造にどのような影響を与えるかを検討し、曲率が負である内側チューブ表面上の窒素単分子層は、曲率が正である外側チューブ上の単分子層よりも長距離秩序性が優れていることを明らかにした。SWCNHのナノ細孔が電荷貯蔵能力に優れており、構造制御の仕方によってはスパーキャパシターとして有望であることが分かった。また、水素と重水素は古典的には同じ大きさであるが、分子量が小さいために低温では量子的振る舞いにより、重い重水素のほうが小さくなる。このために、40K程度では重水素の吸着量が5倍程度大きくなるMOFを見出し、その理論的根拠も示した。MOFについて2段階ゲート吸着を示す化合物を発見した。
著者
東郷 秀雄
出版者
千葉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

研究の目的は、イミダゾール型及びアンモニウム型イオン液体反応場の中で、中性の活性種である炭素ラジカルを発生させ、イオン液体という高極性・高粘性反応場の中での中性炭素ラジカルの化学的挙動を精査し、一般的な有機溶剤との反応性の相違を比較するとともに、その特性を合成化学的に反映させることにあります。そこで、金属亜鉛を用いた1,3-ジハロプロパン類のシクロプロパン環への変換反応を種々のイオン液体反応場で検討した結果、イミダゾリウムNTf_2塩、イミダゾリウムPF_6塩、及びイミダゾリウムOT_S塩では殆ど反応しないが、イミダゾリウムCI塩及びイミダゾリウムBr塩のイオン液体を用いると、シクロプロパン化反応が1,3-ジヨード、1,3-ジブロモ、及び1,3-ジクロロプロパン何れの基質においても効率的に進行することが分かった。つまり、イオン液体を用いることにより、金属亜鉛から1,3-ジハロプロパンへの電子移動が促進され、不活性な1,3-ジクロロプロパンでも効率的に反応することが分かった。これらの知見をもとに種々の2,2-ジ置換及び2-モノ置換1,3-ジハロプロパン類のジ置換及びモノ置換シクロプロパンへの効率的3-exo-tet環化反応を確立した。また、イオン液体固定型ヨードベンゼンを触媒とし、イオン液体中でケトンのmCPBAによるα-トシロキシケトンへの変換反応、及び続くチアオミドとの反応によるチアゾールへの直接変換反応を確立した。イオン液体固定型ヨードベンゼンを含むイオン液体反応場は再生再利用が可能である。