著者
松下 尚之 磯貝 雅裕 近藤 圭一郎 福永 剛隆 北村 信夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.2506-2508, 1998
被引用文献数
1

小腸大量切除施行後の縫合不全の為,長期間経口摂取ができない甲状腺全摘後の症例に対し,経直腸的に坐薬として甲状腺ホルモン剤(チラージンS,甲状腺末)の投与を行った.当初,内服と同じ量のチラージンSを粉末にし坐薬の形で使用したが,血中のf-T4, f-T3濃度は上昇しなかった.そこで甲状腺末200mgから300mgを坐薬とし使用したところ,血中f-T4, f-T3濃度は上昇してきた.坐薬挿入前後に急な血中濃度の変化は無かった.本症例では,術前T4(チラージンS<sup>®</sup>)として150μgを使用しeu-thyroidを保っていたが,今回経直腸的には甲状腺末が200~300mg必要であった.この量は,チラージンS 150μgの2~3倍に相当する.経直腸的に比較的大量の甲状腺ホルモン剤が必要であったのは薬剤の吸収がただ単に悪いというだけではなく,時折,便秘と下痢を繰り返す状況にあったこともその吸収において影響したものと思われる.