著者
松中 照夫 高橋 ひかる
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.502-508, 2001

松中照夫・高橋ひかる(2001):イネ科牧草の1番草におけるN吸収能の草種間差異とその発現要因.日草誌47, 502-508. オーチャードグラス(OG), メドウフェスク(MF)およびチモシー(TY)の窒素(N)吸収能における草種間差異を明らかにすることを目的に水耕栽培試験を実施した。根乾物重(根重)および根長を根の大きさにかかわる要因と考え, 単位根重当たりN吸収量および単位根長当たりN吸収量を根のN吸収活性にかかわる要因と考え, 各草種のN吸収能をこれらの要因で比較検討した。 各草種のN吸収量の差異はTY>OG>MFで, これが葉面積の拡大に差異をもたらし, それが乾物生産の草種間差につながった。MFの根重は, 3草種中最も少なかった。しかし, MFの根のN吸収活性にかかわる2つの要因は, TYと大差がなかった。それゆえ, TYとMFのN吸収能の違いは, 両者の根の大きさにかかわる要因, とくに根重の差異に起因した。OGの根のN吸収活性にかかわる2要因は, 1番草を通じてTYのそれらより大きいか同程度であった。それにもかかわらず, OGのN吸収量がTYのそれより少なかったのは, OGの根重の増加がTYより少なかったためであった。したがって, 水耕栽培条件下でのこれら3草種のN吸収能における草種間差発現要因は, 根重であると結論づけられた。
著者
松中 照夫 熊井 実鈴 千徳 あす香
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.31-38, 2003-02-05
被引用文献数
16

バイオガスプラント消化液由来Nの肥料的効果を,乳牛由来液状きゅう肥および化学肥料と比較することを目的としてOG栽植条件下のポット試験を実施した.得られた結果は以下のとおりである.1)消化液の施与は,OGの収穫部位である刈取り部乾物重を無施与より明らかに増加させた.その効果は,液状きゅう肥のそれとほぼ同等であり,NH_4-N施与量が同じであっても,化学肥料に比較すると劣った。2)消化液や液状きゅう肥に含まれる有機態Nは,見かけ上,OGのN吸収や土壌の可給態Nに影響を与えなかった。したがって,消化液の有機態NはNからみた肥効に大きな寄与をしないと考えられた。3)施与された資材からのNH_3-N揮散は,消化液と液状きゅう肥からだけに認められた。このため,施与されたNH_4-N量からNH_3-N揮散損失量を差し引いた量(正味のNH_4-N施与量)は,消化液区や液状きゅう肥区より化学肥料区のほうが多かった。この差異が刈取り部乾物重の処理間差をもたらしたと思われた.4)正味のNH_4-N施与量がOGに明らかなN欠乏を与えない程度であるたら,その単位NH_4-N量当たりの刈取り部乾物重増加量は,消化液,液状きゅう肥および化学肥料の各資材間に大差がなかった。5)以上の結果から,消化液のNからみた肥料的効果は,液状きゅう肥や化学肥料のそれと本質的な違いはなく,消化液の肥料的効果の発現程度は,NH_3-N揮散損失を考慮した正味のNH_4-N施与量に依存すると結論づけられる。