著者
堂山 昌男 松井 正〓
出版者
西東京科学大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本研究においては、分子動力学の方法を用いて、金属の結晶成長をシミュレートすることを目的として行なった。まず、純物質のN体多体原子間ポテンシャルを開発した。これらのポテンシャルを用いて、気相からの結晶成長を分子動力学を用いて計算し、その成長機構を調べた。金属那珂の相互ポテンシャルは2体ポテンシャルによっては扱えない。本研究では、いわゆるembedded atom法を用いた。面心立方格子をもつ金、銀、銅、六方晶のチタニウムについて計算した結果、面心立方で(111)最密面、六方晶で(0001)最密底面では吸着原子が非常に動きやすいことがわかった。また、吸着原子クラスターを作ると、とたんに動きにくくなることがわかった。表面との吸着エネルギーも計算した。これにより、2体ポテンシャルと多体ポテンシャルの相違が明らかになった。当然のことながらボンドの足し算では表わせない。松井らは銅の分子動力学を用いて、銅の(100)面気相成長を動画に表わした。以上の結果を用いてモンテカルロ計算により、銅の(111)面結晶成長、シリコンの(100)面気相成長のシミュレーションを行なった。これにより、成長速度と結晶成長の関係を明らかにした。結晶速度が速いときには面がアイランドを作りながら成長し、結晶速度が遅いときには1面1面完全に近い結晶が成長することがわかった。これらの結果は平成5年8月末から9月初旬研究代表者が組織したInternational Union of Materials Research Societiesのsymposium D Computer Application to Materials Scienceおよび、平成5年11月末米国ボストンで開催されたMaterials Research Societyにおいて十数編の論文として発表された。