著者
松井 紫朗 高橋 悟
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

通常、自己定位を失うような不安定な状況は、避けられるべき事態とされる。しかし、神経科学の視点から見て、このような動揺状況から抜け出すため、身体のさまざまな感覚、記憶や言葉と結びつけ、新たな定位の獲得のために活発に活動する脳内は、あらゆる関係性に向け開かれた状態にあると考えられる。このような、知的思考の連鎖が起きる現象について、これを可能性と捉え探求するのが我々のねらいである。座位と立位で、正面に見据える姿勢、仰向きに見上げる姿勢で行ったいくつかの実験などから、頭部が傾くことによる体性感覚への入力、前庭覚への異なる刺激が、自己定位を含む対象物との距離や動きの認知に影響を与えることが分かった。