著者
松井 芳樹 窪田 種一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.83, no.9, pp.985-989,A64, 1962-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4
被引用文献数
2

ピリジン-N-オキシド塩酸塩の赤外吸収スベクトルは臭化カリウム錠剤法で測定したものはNujol Mull法で測定したものとは異なり,とくに4μおよび13~15μにいちじるしく異なるスペクトルを得た。この研究は上述の原因を解明しようとして始めたものであるが,n-オキシドのハロゲン化水素酸塩およびオキシムの水酸基の吸収帯について検討しつぎのような知見を得た。(1)N-オキシドの塩酸塩は臭化カリウム錠剤では臭化水素酸塩に,また塩酸塩および臭化水素酸塩はヨウ化カリウム錠剤ではヨウ化水素酸塩となる。しかし逆の変換は行なわれない。(2)n-オキシドのハロゲン化水素酸塩について水酸基に関する3個の吸収帯,すなわち伸縮振動voh,面内変角振動δOHおよび面外変角振動γOHの帰属を行なった。この帰属によりこれらの塩はN±OH…X-(X-はハロゲンィオン)の構造をとっていることが明らかとなった。(3)塩酸塩,臭化水素酸塩,ヨウ化水素酸塩の順にVOHは高波数へ,逆にSOHおよびγOHは低波数へ規則的な変移を示した。(4)上記の規則的な変移をオキシムについても検討しほぼ類似の関係を得た。またオキシムについては水素結合の型式とγOHとの関係についても考察し,折線型水素結合のfoxは直線型のそれより低波数に観測されることを推定した。