著者
宇野 文二 窪田 種一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.2, pp.101-109, 1991-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
56
被引用文献数
1

著者らは近年,電子スペクトルに対する置換基効果を置換基定数で記述する新しい方法を研究してきた。電子スペクトルで測定される一重項あるいは三重項遷移エネルギー(1.3Euv)は, Swain らの FR 置換基定数あるいは湯川らの置換基定数 (σi ,σπ+,σπ-)を用いて, 1.3EUV=aF+bR+C, 1,3EUV=ασi+βσπ++γσπ-+Cと記述された。そして,これらは共役系の n-π* 吸収帯を初め,共役系および脂肪族系の n-π* 吸収帯,分子内電荷移動吸収帯,分子化合物の分子間電荷移動吸収帯およびそれら錯体形成による成分化合物自身の吸収帯などに対する置換基効果に適用できる一般式であることを明らかにした。さらに,ベンゼン置換体の吸収帯を用いて,これらの式の適用限界を議論した。第一吸収帯に対しては合理的に適用できるが,第二吸収帯には適用できなかった。第二吸収帯に対する分子内電荷移動配置の寄与は置換基の種類にいちじるしく依存し,この吸収帯の性格がすべての置換基で同じでないためである。これらの一連の研究について,一般式の誘導の過程から種々の吸収帯に対する適用結果および分子軌道論によるその理論的背景を総合的に述べた。
著者
松井 芳樹 窪田 種一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.83, no.9, pp.985-989,A64, 1962-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4
被引用文献数
2

ピリジン-N-オキシド塩酸塩の赤外吸収スベクトルは臭化カリウム錠剤法で測定したものはNujol Mull法で測定したものとは異なり,とくに4μおよび13~15μにいちじるしく異なるスペクトルを得た。この研究は上述の原因を解明しようとして始めたものであるが,n-オキシドのハロゲン化水素酸塩およびオキシムの水酸基の吸収帯について検討しつぎのような知見を得た。(1)N-オキシドの塩酸塩は臭化カリウム錠剤では臭化水素酸塩に,また塩酸塩および臭化水素酸塩はヨウ化カリウム錠剤ではヨウ化水素酸塩となる。しかし逆の変換は行なわれない。(2)n-オキシドのハロゲン化水素酸塩について水酸基に関する3個の吸収帯,すなわち伸縮振動voh,面内変角振動δOHおよび面外変角振動γOHの帰属を行なった。この帰属によりこれらの塩はN±OH…X-(X-はハロゲンィオン)の構造をとっていることが明らかとなった。(3)塩酸塩,臭化水素酸塩,ヨウ化水素酸塩の順にVOHは高波数へ,逆にSOHおよびγOHは低波数へ規則的な変移を示した。(4)上記の規則的な変移をオキシムについても検討しほぼ類似の関係を得た。またオキシムについては水素結合の型式とγOHとの関係についても考察し,折線型水素結合のfoxは直線型のそれより低波数に観測されることを推定した。