著者
稲村 宏紀 桐生 拓司 松井 英介 大橋 信子 星 博昭 叶 宗一郎 尾関 雄一 尾形 利郎 設楽 芳範 桑野 博行
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.195-199, 2001-06-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

【目的】肺癌検診におけるCTの有用性の検討【対象・方法】最近4年間に当院に人間ドック目的で入院した男性1335人, 女性19人の合計1354人. 年齢は22歳から66歳で平均48.3歳である. 検査項目は問診, 喀痰細胞診, 直接胸部単純写真(以下胸単), 胸部X線CT(以下CT)である. CT導入前の胸単のみの検診1281人と比較する.【結果】CTを用いた検診では1354人中5人(0.37%)の肺癌が発見された(10万人対369). 内訳は高分化型腺癌3例, 低分化型腺癌1例, AAH1例であった. 低分化型腺癌の1例はMissed caseである. いずれも胸単では指摘できなかった. 一方, CT導入前の胸単のみの検診では肺癌は発見できなかった. 【考察】胸部CT検診の早期肺癌発見における有用性の報告は多くの施設によりなされている. 今回我々の検討では, 対象は比較的若年層であり, 通年検診症例である. CT導入前の肺癌発見が1281例中0例に対し, 導入後は1354例中5例であり1例を除き早期肺癌であった. 費用効果などあらゆる側面からCTの有用性を検討すべきであり, また対象とする集団の年齢構成や職種などにより適切な検診方法を検討すべきである.
著者
桐生 拓司 松井 英介 塩谷 真由美 星 博昭 酒井 聡 下川 邦泰
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.49-53, 1996-02-20

症例は47歳男性.1976年多発性肺軟骨性過誤腫のため腫瘍摘出及び中葉部分切除術を施行された.その後無症状で経過していたが, 1994年7月上気道炎のため近医を受診した際, 胸部異常影を指摘され当院放射線科紹介となった.画像上右胸壁を基底として胸腔内に大小結節状に進展する腫瘤影及び中葉に結節影がみられた.エコー下針生検にて軟骨の増生像が認められ, 軟骨性過誤腫の再発と診断し, 同年12月13日手術を施行した.多発性肺軟骨性過誤腫は稀な疾患で, 内外で15例が報告されているにすぎない.本疾患の特徴として, (1)若年発生であること(平均発症年齢34.3歳)(2)再発が高率(6/15 40.0%)で, 再発までの期間が長いこと(平均期間12.7年)(3)若年女性で胃平滑筋腫瘍, 副腎外傍神経節腫を合併することがあること(肺軟骨性過誤腫を含めたこれら3疾患は"Carney syndrome"として報告されている)を挙げることができる.