著者
吉澤 晋 飯倉 洋治 松前 昭廣 菅原 文子 小峯 裕己
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.313-329, 1991 (Released:2018-05-01)

近年,喘息その他のアレルギー性疾患が社会的な問題となって来ている。その原因としては食物以外に,大気汚染,ダニ,花粉,カビ等居住環境に関連した多くのものが挙げられているが,特にカビは住宅の断熱性・気密性の向上と生活様式の変化に関連しでいるものと考えられている。この研究は,カビ・アレルギーの実態,患者の居住環境のカビ汚染の実態,評価方法,成育条件等の調査を通して,被曝量の予測,総合的対策について検討したものである。まず小児アレルギー疾患とカビについて住宅構造との関連について既知の知見をまとめた。住宅室内に成育するカビについての調査を夏季・冬季に行ない,成育する状況およびその主要なカピの属・種を求めた。さらに在来からの知見により,住宅に成育するカビの主要なもののまとめを行なった。住宅の空気経路による被曝の評価のためには,多数の住宅における測定が必要であり,患者家族に測定を依頼するためにパッシプ型の測定器の基本特性を求めた。カビ粒子に対して,12時間程度の被曝を計測する落下法が利用できることが分かった。カビの成育について,壁面の水蒸気圧と結露の影響を実際の住宅で調査を行なった。また,各種の相対湿度に対する建築材料,畳等におけるカビの成育速度,および更に温度変動を与えた時の成育速度への影響等を求めた。最後にこれらの調査に基づいて,住宅室内におけるカビ・アレルギーの防止対策の提案を行なっている。