著者
中村 一文 三浦 大志 松原 広己 伊藤 浩
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.140, no.6, pp.265-269, 2012 (Released:2012-12-10)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

心不全患者においては交感神経の緊張(カテコラミンの上昇),レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)の亢進,TNF-α増加,頻脈や虚血が心筋において活性酸素(ROS)を発生させている.ROSは脂質過酸化の過程でHNEという有害アルデヒドを発生させる.このアルデヒドはさらにROS発生を亢進させる.このようにして発生したROSはCa2+制御タンパク質に異常を導き,細胞内カルシウム動態の異常や細胞内カルシウム濃度の上昇をもたらし,大量のカルシウムによる負荷(カルシウム過負荷)では心筋細胞死も誘導する.β遮断薬はカテコラミンによるROSの発生を抑制し,さらにカルベジロールはフリーラジカルスカベンジャーとして直接の抗酸化作用を有して,Ca2+動態を正常に保つよう働くことができる.