著者
後藤 芳彦 松塚 悟 亀山 聖二 檀原 徹
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.17-33, 2015-03-31

我々は,北海道洞爺カルデラ中島火山の火山地質を明らかにするため,ヘリコプター搭載型の高分解能レーザースキャナを用いたレーザーマッピングと,地表地質調査を行った.レーザーマッピングは中島の全域を含む3×3kmで行い,計測データから3次元のデジタル地形図を作成した.地表地質調査は3次元デジタル地形図を用いて中島の全域で行い,詳細な産状記載と岩石記載を行った.デジタル地形図と地表地質調査から,中島の詳細な火山地質と形成史が明らかになった.中島は,デイサイトおよび安山岩質マグマが噴出して形成した8個の溶岩ドーム(東山ドーム,西山ドーム,北西ドーム,北山ドーム,南西ドーム,観音島ドーム,弁天島ドーム,饅頭島ドーム),デイサイトマグマが湖底堆積物を押し上げて形成した潜在ドーム(北東岬ドーム),およびデイサイト質のマグマ水蒸気噴火により形成したタフコーン(東山火砕丘)からなる.中島の北東部と南西部には,泥岩と砂岩からなる湖底堆積物が分布しており,中島の火山活動がカルデラ底の隆起を伴ったことを示す.中島は,洞爺カルデラ中央部のリサージェントドームの形成と,それに伴うデイサイト〜安山岩質マグマの噴出により形成されたと考えられる.高分解能レーザースキャナによる地形計測と3次元デジタル地形図を用いた地質調査は,火山地質の解明に極めて有効である.