著者
松尾 ひとみ
出版者
静岡県立大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

先天性心疾患の手術後に水分制限を受けたこどものストラテジーの構造を明確化し、口渇の苦痛を緩和するケアモデルの開発を目指して、6〜12歳の先天性心疾患で手術をうけたこどもを対象にグランデッドセオリーを用いて行った。その結果、水分制限を受けたこどものストラテジーの構造は、2つの次元「飲みたい-飲みたくない」、「飲める-飲めない」に沿って、6つのコアカテゴリーが点在する構造と、その構造を統合し<ちょうどいい飲水量の感覚>のコアカテゴリーが出来るという構造であった。ストリーラインは、こどもは術後、早期から<飲みたい時・飲みたくない時がある>と常に口渇が発生する訳ではないと気づいていた。同時に、<病院だと喉が渇かない>と、口渇の原因に環境温や活動量が関与すると冷静に分析できるまでに至っていた。やがて、食事の開始時に医療者から水分制限の説明をうけ、<測らないと飲めない>と飲水量を測定する未経験の飲水方法に困惑していた。こどもは、限定された範囲に飲水量を納める様々な試行錯誤の過程から、<大切に飲む>という口渇をコントロールし飲水する独自の戦略を開発していた。しかし、水分制限が緩和していく段階毎に、医療者と保護者に<飲むと悪いことが起こる>というメッセージを送られ、こどもは<飲みたいけどガマンする>と恐れ、少な目に飲水を自粛していた。こどもは、このような水分制限のある生活体験を約2週間経過すると、体験が蓄積し、こどもに<ちょうどいい飲水量の感覚>が芽生え、身体に必要な飲水量の目安が感覚で掴めるようになっていた。
著者
松尾 ひとみ
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

心臓外科術後のこどもの飲水行動は、治療による一日飲水量の制限だけではなく、入院生活で出会う見知らぬ人や自宅と違う生活(例:ナースコールを押して水をもらう、配分された水を飲水する等)への馴染めなさに左右されていた。飲水量の制限に関わらず、こどもが快適に、適切に飲水するためには、医療者がこどもの飲水行動を管理する「治療としての飲水」ではなく、こどもの「生活としての飲水」ができるシステムの必要性が示唆された。