著者
横尾 宗敬 松尾 平 岩佐 俊吉
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.235-243, 1962
被引用文献数
1

モモの整枝を行なう際に, 主枝の間隔をあけて出すと下部主枝が優勢になりやすく, 3本の主枝を均斉に作るのは容易でない。従つて, この原因を明らかにし, 主枝形成のよい方法を見出すために1955年から1961年までこの研究を行なつた。<br>1. 主枝間差の判定には, 主枝間最大差% (3主枝間断面積最大差/3主枝総断面積&times;100) を算出して行なつた。<br>2. 主枝間隔をあけて出した場合には, 下の方の主枝が大きくなるが, 車枝の場合は必ずしも下の方から出た主枝が大きくなるとは限らず, 主枝間差も少ない傾向があつた。<br>3. 第2年目には主枝の大きさの順位の変つたものがあり, 第2主枝が大きくなる傾向があつた。深耕してあるものは第1主枝の大きいものの割合が少なくなり, 主枝間差の顕著に回復するものもあつたが, 無深耕のものは依然として第1主枝の大きいものの割合が多かつた。<br>4. 定植前細根を切去したものは主幹の下の方からの枝が多く伸び, 上の方からの枝は少なかつた。断根しなかつたものは関係が逆であつた。<br>5. 台木を実生し居接をかけて直根の発達した樹では主枝間差を非常に少なくすることができた。<br>6. 遅植, 追肥, 断根の処理から, 主枝間差の原因として, 発根が遅れ, ある時期以後根が急激に伸び, これが栄養供給の不均衡を起こすことが考えられ, その後の試験の結果, 3月下旬移植したものはその後2か月位は根が動かず, その後急激に伸長を始め, 6月下旬に大部分の根が動くのを認め, これを7月初旬からの急激な主枝間差の発現の大ぎな原因と考えた。<br>7. 実生台木に居接したモモの直根は, その年の終りまでは明らかに認められたが, 2年目の終りには側根の発達が著しく, 認められなくなつていた。<br>8. 深耕を行ない実生台木に居接し, 整枝した場合にも, 下部主枝優勢性は現われる。しかし, 満足な主枝形成のためにはこの方法が唯一の方法と思われる。<br>9. 土壌条件の悪い場合には, 2本主枝にし, これから1本ずつ亜主枝を出すようにして, 4本主枝を出す整枝が合理的ではないかと考えられる。