著者
松嶋 祐子
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-9, 2021-03-15

犯罪報道については,古くから事前に事件についての情報を知ることで,公判前に特定の印象形成をさせるのではないかとの問題視がある。メディア研究では,メディア報道の在り方が議論の争点づけを行うことをメディア・フレームという。本稿では,新聞による犯罪報道が事件により取り上げられ方が異なっていないかどうか,交通事犯を報じた記事を取り上げて検討した。東池袋自動車暴走事故と,神戸市バス事故を報じられ方(掲載件数,時期,新聞記事のテーマなど)から比較を行った。その結果,事故自体については新聞は淡々と報じていることが読み取れたが,東池袋自動車暴走事故については,高齢者の運転の安全性への疑問,特に自動車運転免許返納の議論へと発展しており,メディアでの露出度が高いことがわかった。
著者
松嶋 祐子
出版者
専修大学人文科学研究所
雑誌
専修大学人文科学研究所月報 = Senshu University Institute of Humanities Monthly Bulletin (ISSN:03878694)
巻号頁・発行日
vol.306, pp.25-39, 2020-07-31

本稿では、犯罪・非行領域の心理臨床の特性について述べた。まとめると、①対象者にとっては半ば強制的な開始であり、低い動機付けであることが多いこと、②職員は様々な側面で二重役割(ダブル・ロール)であること、③時間的制約が厳格であること、④客観的事実が重視される場であること、である。④については、情報収集が主軸となる場でありながらも、臨床家としては主観的事実と客観的事実を丁寧に分けて、主観的事実についても掘り下げていくことが必要であることを事例も交えて紹介した。時間的制約の厳しい中、主観的事実を的確に捉えるには、面接者は複数の問いを立てられることが重要である。そして、犯罪・非行臨床の本質ともいえる対象者の動機づけに係る課題については、有意義なアプローチの一つとして動機づけ面接を紹介した。