著者
国里 愛彦
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.21-33, 2020-03-15

本論文では,心理学における再現性の危機について概観した上で,再現可能性とは何かその定義について論じた。Claerbout-Donoho-Pengによるreproducibility(再解析による再生可能性)とreplicability(追試による再現可能性)の区別から始まって,Goodman et al.(2016)の3つの再現可能性(方法・結果・推論の再現可能性)について紹介した。再現可能性を高める取り組みは,近年始まったものも多く,個々の取り組みが再現可能性におけるどういう位置づけになるのかわかりにくい。そこで,Goodman et al.(2016)の3つの再現可能性ごとに,再現可能性を低める要因と高めるための方策について整理することで,再現可能性の全体像を捉えられるように解説した。最後に,方法の再現可能性(再解析による再生可能性)を高める取り組みとして,共有に向けたデータ管理,解析のパッケージ化,解析環境のコンテナ化について具体的に解説した。再現可能性を高めるための方策の中には心理学教育のなかで扱われてこなかった内容もあり,本論文が再現可能な心理学研究実践の一助となることを期待する。
著者
岡村 陽子
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-7, 2016-03

臨床神経心理士(Clinical Neuropsychologist)とは,脳と行動の関係について理解し,神経心理学的な知識に基づいて評価や治療的な介入を行う専門職である。イギリスの臨床神経心理士資格はQualification in Clinical Neuropsychology: QiCN といい,イギリス心理学会により認定されている。2003年にスタートしたQiCN は,臨床心理の博士課程3年間を終了した後,臨床心理士としてHCPC に登録し,臨床神経心理学の修士に該当するDiploma を取得するなどして臨床神経心理学に関する十分な知識を持っていること,臨床神経心理学分野の十分な研究能力を有していること,臨床神経心理学の実践を行う能力が十分にあることという条件を満たすことで認定を受けられる。現在グラスゴー大学,UCL,ブリストル大学に臨床神経心理学の課程が設置されている。日本においても,臨床神経心理学の教育プログラムが充実することが期待される。
著者
岡田 謙介
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.1, pp.91-98, 2011-03

Cronbach's alpha has been used as a golden standard reliability criterion. Although psychometricians have long been pointed out that the alpha is not the most appropriate way to examine reliability, the gap between psychometrics and psychology has impeded the application of other reliability measures. However, recently the interest has been growing many papers have published recommendations for alternative reliability measures. In this paper, we first review both classical and modern lower bounds of reliability. Then, these measures are demonstrated by the analysis of several artificial and real datasets. The results coincided with the findings of Revelle & Zinbarg (2009) in that ωt is the most recommended lower bound.
著者
大久保 街亜
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.1, pp.81-89, 2011-03

Reaction time is used to measure various types of human performance such as perception, memory, and problem solving. Many constructs, from unconscious prejudice to intelligence to personality, can also be measured by use of reaction time. It is, therefore, fundamentally important to remove the influence of spurious long reaction time in a positively skewed distribution, which reaction time data tends to follow. The present article evaluated methods for dealing with reaction time outliers. These methods were categorized into three types : Sample selection, transformation, and whole distribution analysis. In this article, I summarized pros and cons of these methods and made suggestions for a practical reaction time analysis.
著者
中沢 仁
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.2, pp.35-42, 2012-03

ブレイン・マシン・インターフェース技術の開発に相まって進展したブレイン・デコーディングの技術は,マインド・リーディングとしての理解も可能であり,心的機能の解明に役立つ可能性を秘めている。このブレイン・デコーディングの方法について,現行の脳活動情報の測定技術による制約,デコーディングのモデル,心理学的基盤について原理的な考察を行った。また,ブレイン・デコーディングにブレイン・マシン・インターフェースの方法を組み合わせることによる,心的機能構築のシミュレーションの可能性について考察した。
著者
高田 夏子
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.10, pp.7-19, 2020-03-15

The main novels by Endo Shusaku's Christian themes are "White People", "Yellow People", "Sea and Poisons" "Wonderful Fool", "Silence", and then a compilation of religious views, that is "deep rivers". Endo was baptized in Japan and went to Lyon In France to study Christian writers. Studying abroad made him feel strongly that he was Japanese overseas. And that experience also led the way for novelists. It was from "silence" that he began to take up religiousness from the front, but I felt that there was some difference in the author's mental life before and after "silence". Endo had a tuberculosis operation several years before writing "Silence". I think that the experience of "Fumie" (Tools used for persecution of hidden Christians In Edo era) seen at the time of hospitalization was a kind of religious experience, and it was a turning point that would determine the direction of subsequent works. It seems like a mission to convey the image of Jesus that he reached.
著者
杣取 恵太 坂本 次郎 時田 椋子 鈴木 彩夏 国里 愛彦
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-58, 2016-03-15

Diagnostic tests specify whether a person has a specific disease or not and it extremely contribute decision-making of the intervention. Various types of diagnostic test are proposed and their methodological qualities have been improved. However, there are much inconsistent evidences in diagnostic test accuracy studies. We have become so difficulty of decision making in diagnostic test. Therefore, we believe that individual studies on diagnostic test accuracy should be synthesized for evidence based clinical psychology. In systematic reviews of diagnostic test accuracy, Cochrane collaboration is making up its guideline "Handbook for diagnostic test accuracy reviews". In the handbook, some key components of systematic reviews and meta-analysis in diagnostic test accuracy are explained, which contain the drawing up protocol, search strategy, assessing methodological quality, and meta-analysis. We review the key components of systematic reviews and meta-analysis according to "Handbook for diagnostic test accuracy reviews".
著者
大久保 街亜
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.81-89, 2011-03-15

Reaction time is used to measure various types of human performance such as perception, memory, and problem solving. Many constructs, from unconscious prejudice to intelligence to personality, can also be measured by use of reaction time. It is, therefore, fundamentally important to remove the influence of spurious long reaction time in a positively skewed distribution, which reaction time data tends to follow. The present article evaluated methods for dealing with reaction time outliers. These methods were categorized into three types : Sample selection, transformation, and whole distribution analysis. In this article, I summarized pros and cons of these methods and made suggestions for a practical reaction time analysis.
著者
石黒 良和 榎本 玲子 山上 精次
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-14, 2015-03

本研究では幼児を対象に, 向社会的行動, 感情的役割取得, 対人的問題解決の学年による水準の変化を検討するとともに, 3者間の関連性を検討した。向社会的行動とは他者からの見返りを期待せずに, 他者への利益のために起こす対人行動のことである。役割取得とは他人の感情, 思考, 観点, 動機, 意図を理解する能力のことである。対人的問題解決とは対人的な葛藤に直面した場面に適した対処法を導き出したり, 他者に対する社会的行為の結果を予測する能力のことである。感情的役割取得は学年に伴い一貫して水準が上昇していた。それに対して対人的問題解決は年長の幼児のみ他学年の幼児よりも有意に水準が高く, 感情的役割取得と比較すると成長に時間を要することが考えられる。向社会的行動は年長および年中の幼児が年少の幼児よりも有意に平均値が高かった。また, 向社会的行動に対して感情的役割取得および対人的問題解決の双方とも正の影響を与えていることが明らかとなった。このことから感情的役割取得, 対人的問題解決の水準が高いほど, 向社会的行動の水準も高いという関連性が示唆された。
著者
蔵屋 鉄平 澤 幸祐
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.33-40, 2013-03-15

抗うつ薬の薬効評価や新規抗うつ薬の開発には,適切な動物モデルの存在が欠かせない。うつ病動物モデルの作成法は複数あるが,操作の簡便性や薬物への反応性の高さから,強制水泳試験がもっとも頻繁に用いられるうつ病動物モデルである。強制水泳試験は,薬効評価のみならず,うつ病の病態生理の解明にも多大な貢献を果たしてきた。しかし,頻用されるに伴い,変法が多様化し,そこから得られる知見は複雑化している。また,用いる系統によっても反応性は異なることが知られ,最適なモデルを特定するには至っていない。さらに,うつ病モデル動物とヒトのうつ病との間には決定的な隔たりがあり,その問題をいかに扱っていくかは重要な課題である。本稿では,強制水泳試験によるうつ病モデルマウスの知見を概観し,その現状と今後の課題を検討した。
著者
高田 夏子
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.4, pp.27-38, 2014-03

作家森茉莉について,まずその気質を,てんかん気質,中心気質,内向的感覚タイプという観点から考察した。次に,森茉莉と父親鴎外との関係について述べ,父親元型と密着しすぎている「父の娘」という観点から見たとき,「父親の輝きを背後にもった少女」ということができ,生涯その父子のナルシシズムに守られていたということが言えた。また彼女は,「少年愛もの」から本格的な小説を書き始めているが,この「少年愛もの」は現代の「腐女子文化」に通じるものがあることを論じた。そして,長編小説『甘い蜜の部屋』を創造し書ききることで,父の庇護を必要としない「絶対少女」となり,それは父からの自立を意味していたということを明らかにした。
著者
榎本 玲子 山上 精次
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.1, pp.61-69, 2011-03

外界の物体と身体との直接的な相互作用が行われる身体周辺の空間を身体近傍空間という。複数のモダリティの刺激に反応する多感覚ニューロンの働きにより規定されているこの空間では,複数モダリティからの感覚情報が統合されるため,他の領域とは異なる空間知覚特性がある。そして、この空間の表象は,ダイナミックかつ機能的な可塑性を持ち,身体部位や道具の機能,使用経験などにより変化することを多くの研究が実験的に示している。その一方で,ここ数年では,そのような多感覚ニューロンの働きが身体近傍空間における単一モダリティの刺激処理にも影響を与える可能性を示唆した証拠が増えつつある。本レビューでは,これらの研究を概観し,身体近傍空間における空間知覚の特性とその可塑性について論議する。
著者
乾 吉佑
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.11-22, 2013-03-15

本論考は,日本心理臨床学会大会での学会賞受賞講演を基に作成されたものである。本邦でも自閉症児(者)との長期的な心理療法は経験されているであろうが,未だカナータイプの自閉症との40年間の治療経過の報告は見られていない。40年間の治療経過のまとめと,そこから学んだことを取り挙げ,臨床心理学専攻の若き後輩の臨床活動に益するものとなることを願って報告する。
著者
小杉 考司
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-7, 2019-03

本研究では大学教育における学習管理システムから収集された,学生の授業資料へのアクセス記録から,学習成績に及ぼす影響を検討した。授業履修者77名の14回の投影資料の閲覧日時,閲覧回数と,第15回に行われた授業内試験による学生の成績を用いて,アクセス変数について指数分布に基づくモデルを,またそのモデルで推定された平均アクセス日数による成績への回帰モデルをベイズ推定した。分析の結果,アクセスしようとするかどうかという意思決定にかかわる態度が,成績に対して最も強く影響しており,最終的な評定値について最大10点程度の違いを産むことが明らかになった。最後に,モデリングによって柔軟な表現が可能になってはいるが,妥当な変数を選出し,意義のある予測モデルにすることの重要性について言及した。
著者
二瓶 正登 澤 幸祐
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-53, 2017-03-15 (Released:2017-05-29)

臨床心理学の実践場面において認知行動療法が盛んに実施されており,また多くの研究が行われている。認知行動療法は行動療法に起源を持つものの,近年では認知が感情や行動の原因であり,クライエントや患者が有する不適応的な認知を変容させることで心理学的な問題は改善されるという認知療法的な枠組みに基づいた症状の理解や介入が主流となった。認知療法の隆盛により,従来の行動療法が重視してきた学習心理学の枠組みに基づいた症状の理解や介入はあまり実施されなくなった。このような現状に至った背景として,行動療法あるいは学習心理学ではヒトが有する認知や言語といった個体の内面で生じる過程を適切に扱うことができないとする批判がある。しかし現代の学習心理学で用いられる諸理論においては学習が生じる際の認知過程が重要視されており,このような批判は適当ではない。そこで本論文では,現在の学習理論の観点から臨床心理学的問題をどのように理解することが可能か,そしてどのように実践上の問題を解消させることが可能かを展望する。さらに認知行動療法に学習理論を取り入れる利点や,近年行われるようになった認知行動療法で用いられてきた概念と学習心理学との融合に関する試みについても述べる。
著者
高田 夏子
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.4, pp.27-38, 2014-03

作家森茉莉について,まずその気質を,てんかん気質,中心気質,内向的感覚タイプという観点から考察した。次に,森茉莉と父親鴎外との関係について述べ,父親元型と密着しすぎている「父の娘」という観点から見たとき,「父親の輝きを背後にもった少女」ということができ,生涯その父子のナルシシズムに守られていたということが言えた。また彼女は,「少年愛もの」から本格的な小説を書き始めているが,この「少年愛もの」は現代の「腐女子文化」に通じるものがあることを論じた。そして,長編小説『甘い蜜の部屋』を創造し書ききることで,父の庇護を必要としない「絶対少女」となり,それは父からの自立を意味していたということを明らかにした。
著者
吉田 弘道
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-8, 2012-03

これまでに行われている育児不安研究を概観し,育児不安の定義,育児不安の尺度,育児不安の要因について論じるとともに,それぞれの課題について検討した。すなわち,定義については,育児不安としては確立されつつあるが,育児ストレスとの区別が難しいこと,そのことが育児不安の測定尺度の問題として残されていることを述べた。また尺度の問題としては,育てている子どもの年齢の異なる母親について同じ項目を用いて測定することについて疑問があることを述べた。要因研究に関しては,要因相互の関係をみながら育児不安への影響を検証している研究がみられないことを述べた。以上の課題を検討することにより,今後育児不安研究は発展していくことが考えられる。