著者
久原 有貴 関口 道彦 小鴨 治鈴 松本 信吾 七木田 敦 杉村 伸一郎 中坪 史典 上田 毅 松尾 千秋
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 = The Annals of educational research (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.43, pp.25-33, 2014

昨今,子どもの健康問題から,幼児期の身体活動の重要性が注目されている。本研究は,森の中で遊びを中心とした保育を行っている森の幼稚園(広島大学附属幼稚園)での身体活動量と体力・運動能力との関係を明らかにした。研究1では5歳児クラスの幼児を対象に歩数という指標を用いて身体活動量を測定した。その結果,森の幼稚園の幼児は一般的な幼稚園の幼児よりも保育時間中に多く歩いたり走ったりしていた。研究2では3~5歳児クラスの幼児を対象にMKS幼児運動能力検査を用いて体力・運動能力を測定し,また,身体活動量と体力・運動能力との関係を調べた。その結果,森の幼稚園の幼児の体力・運動能力は平均的であり,歩数が多い幼児ほど瞬発力とスピードが高かった。研究3では,森の幼稚園の卒園児の体力・運動能力を調べた。その結果,森の幼稚園出身の児童の体力・運動能力は,1年生の時点では平均的で,2年生以降になってから平均よりも高くなっていた。このことから,森の幼稚園という保育環境は幼児期に多くの身体的活動を行うことを促し,それが心情面などへの影響を媒介として,小学校入学以降の体力・運動能力に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。