著者
松本 泰丈 田畑 千秋
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.143-154, 2012 (Released:2021-09-15)
参考文献数
8

2009年にユネスコによって「危機言語」として指定された奄美語の現況を,本土出身の研究者(松本)と島出身のnative speaker(田畑)という異なった立場を持つ二名が,それぞれの立場から粗描した。粗描の方法は「1960年代までの奄美語」,「1970~80年代の奄美語」,「1990~現代の奄美語」に分け,それぞれの時代における奄美語の状況を,両名の直接見聞をふまえて述べる。(結論的にいえば)両名は,1960年代まではシマユムタ(伝統的方言)が生きて使われていた時代,1970~80年代はトンフツゴ(奄美共通語)が急速に広まった時代,1990年~現代はシマユムタが急速に消滅している時代ととらえている。 また,論文末には,明治以降に奄美大島旧笠利村赤木名集落の人々によって再開拓されたトカラ列島諏訪之瀬島の言語事情についても現況を簡単に報告した。
著者
金田 章宏 松本 泰丈 HOLDA M・A
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

当該の研究期間における研究成果の概要は以下のとおりである。1.八丈方言の文法書を作成した。これはまだ草稿段階のものであり、こんごこれをもとに、練習問題や発展問題などを充実させて学校教育における副読本として利用できるレベルのテキストにまで完成度を上げることで、消滅の危機に瀕した方言再生の手がかりとなる可能性がある。2.過去に録音された八丈島の談話資料をローマ字とカナで文字化し、対訳を付した。これまでに代表者がかかわってきた八丈方言民話・談話資料作成の一環であり、研究期間終了後も継続して進められる予定である。3.八丈方言とのかかわりを念頭に、奄美方言の文法を記述した。分担者である松本がこれまでに行なってきた八丈・琉球方言比較研究の一部となるものであり、代表者が現在個人で行なっている八丈・八重山方言比較研究とも深く関連するものである。4.研究成果の一部を国際会議で発表した。関連する内容についてはこれ以前にも国際会議で発表を行なっているが、今回の研究期間にかかわるものだけを報告書に掲載する。さらに、分担者であるホウダは他言語との対照研究に重点を置いた別稿を準備中である。5.国語研究所に保存されていた八丈方言資料(カードで保存)を電子化し、検索可能なものとした。これにより、文法研究の深化に比べて方言辞典作成の面で遅れていた部分を多少なりとも補うという可能性がでてきた。これについては報告書にも掲載するが、代表者のホームページでの公開も予定している。6.代表者のHPを開設し、過去の関連する科研の成果とあわせて、研究成果の公開を開始した。こんごさらに充実させていく予定である。http://student2.international.chiba-u.ac.jp/kaneda/index-htmlのなかの八丈方言資料