著者
松本 逸郎 土屋 勝彦
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.抗卵白アルブミン抗体で受動感作した後に、アルブミン抗原でイヌの脳内肥満細胞を刺激した。脳内肥満細胞の刺激でACTHを介して副腎皮質ホルモンが、交感神経を介して髄質ホルモン分泌が亢進した。Compound 48/80で脳内肥満細胞を刺激しても副腎髄・皮質ホルモンが上昇し、抗利尿ホルモンやレニン分泌も亢進した。これらの反応は正中隆起部の肥満細胞が脱顆粒しヒスタミンを放出し、CRF分泌をへて下垂体-副腎皮質系と交感神経-副腎髄質および腎傍糸球体細胞系を活性化するとともに、下垂体後葉をも賦活した結果であり、脳内肥満細胞が抗原センサーとなり得ることを示唆している。2.副腎の肥満細胞は内包するヒスタミンやPAFを放出し、副腎皮質ホルモン分泌を高めるので副腎の肥満細胞はI型アレルギー発症時に亢進した皮質ホルモン分泌により炎症を抑制し、生体防衛に働く可能性がある。腹腔内の炎症ではエンテロクロマフィン細胞と肥満細胞に含まれるセロトニンやヒスタミンが内臓求心性神経を介して炎症情報を脳へ伝え発熱し、摂食や行動を抑制し体力の温存と炎症からの回復を計り生体防衛に寄与していることが分かった。3.GlucocorticoidはLPS誘発の発熱、摂食抑制などの炎症を抑制する。脳内でも末梢にでも居住する肥満細胞はアレルゲンに反応して脱顆粒し、Chemical mediatorを放出しストレスホルモンを分泌亢進する。このことは肥満細胞誘発のアレルギー症には皮質ホルモン分泌亢進で、アナフィラキシーショクに対してはカテコールアミン、レニン、ADH分泌亢進で、呼吸不全に対してはEpinephrineと皮質ホルモン分泌亢進で対抗し,ネガティーブフィードバック的に炎症の進行を抑制する可能性が明らかになった。