著者
冨田 仁美 奥田 真也 松本 雄志 鴨川 賢二 岡本 憲省 奥田 文悟
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.340-345, 2012 (Released:2012-09-26)
参考文献数
19

症例は65歳,男性.突然の左片麻痺と構音障害にて当科へ入院となった.左片麻痺のほかに左核上性顔面神経麻痺,左舌下神経麻痺,頸部以下の左半身で深部感覚障害がみられた.頭部MRIでは右延髄上部から中部の腹側から被蓋部に梗塞巣を認めた.3週間後も左舌下神経麻痺は続いたが,線維束攣縮や筋萎縮はみられないため,左核上性舌下神経麻痺と診断した.本例の顔面神経麻痺と舌下神経麻痺は病巣と反対側にみられたため,両神経核への核上性線維が延髄において交叉する前に障害されたと推測された.核上性の顔面神経および舌下神経線維の交叉部位には延髄上部から下部にかけてバリエーションが存在することが示唆された.