著者
浜田 英里 岡本 憲省 奥田 文悟 中村 俊平 川尻 真和 小原 克彦 三木 哲郎 大塚 奈穂子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.2379-2381, 2005-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

尿閉を呈した脳脊髄髄膜炎2症例の臨床的特徴を検討した.いずれも感冒症状後に意識障害や脊髄症・神経根症を伴って発症し,ステロイドが有効であった点,髄液の細胞蛋白の上昇がみられた点などからウイルス感染を契機とした急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と診断した.ステロイドを中心とした治療により神経徴候と尿閉は比較的速やかに改善した.尿閉の成因として無菌性髄膜炎に伴う急性仙髄神経根障害とそれに随伴した一過性の括約筋障害(Elsberg症候群)が考えられた.
著者
渡部 真志 二宮 怜子 近藤 総一 鴨川 賢二 冨田 仁美 藤原 聡 奥田 文悟 岡本 憲省
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10714, (Released:2020-04-24)
参考文献数
18

要旨:症例は41 歳男性.習慣的に行っていた頸部回旋直後に後頸部痛を自覚した後,ふらつき,呂律困難,右半身の脱力が順に出現した.意識はJCS 1 で,右同名半盲,構音障害,右片麻痺,左上下肢の運動失調がみられた.頭部MRI,DWI で左小脳と左視床内側に急性期脳梗塞を認めた.頭頸部MRA ならびに造影CT にて右椎骨動脈解離による動脈原性塞栓症と診断した.脳血管撮影では左回旋位で右椎骨動脈の血流の途絶がみられた.撮影中,右頸部回旋時に後頸部痛を生じた.左椎骨動脈に狭窄性変化と右回旋位で血流の途絶を認めた.検査後から一過性の浮動感が出現した.翌日の頭部MRA にて新たに左椎骨動脈解離を認めたため,両側椎骨動脈解離によるbow hunter 症候群(BHS)と診断した.抗血小板剤内服と頸部硬性カラー装着にてBHS に関連する症状は速やかに改善した.頭蓋頸椎移行部における椎骨動脈解離を疑って脳血管撮影を行う際には,頸部回旋により新たな動脈解離を来す恐れがあることに最大限の注意を払うべきと考える.
著者
鴨川 賢二 冨永 佳代 岡本 憲省 奥田 文悟
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.126-131, 2006-01-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

今回我々は短期間に6例の手口感覚症候群を経験したのでその臨床像と責任病巣について検討した. 年齢は56~90歳で, 男性4例, 女性2例であった. 発症から受診までの時間は当日受診が3例, 翌日2例, 5日目1例であった. 感覚障害の分布は全例とも手口型で, 自覚的感覚障害は全例でみられ, 他覚的感覚障害は4例でみられた. 自覚的しびれの身体部位は表在覚低下部位よりも広い傾向があった. 随伴症状は3例でみられ, 失調性不全片麻痺, 不全片麻痺, 巧緻運動障害, 構音障害であった. 全例とも視床近傍の梗塞 (5例はラクナ梗塞, 1例は branch atheromatous disease) により発症し, 責任病巣は後腹側核群 (4例), 視床枕・内側膝状体近傍 (1例), 視床後腹側部・内包後脚・放線冠 (1例) であった. 3例で無症候性脳梗塞がみられた. 危険因子は高脂血症, 高血圧, 糖尿病, 頸動脈硬化, 喫煙, 多血症であった. 予後は1例でのみ自覚的感覚障害が消失したが, 残りの5例では感覚障害や麻痺が残存した. 手口感覚症候群は主として視床の後腹側核群の病変により生じるが, 上行性感覚線維の障害によっても発症することが示唆された. 初発症状は軽症であるが, 運動障害を合併する例もあるため早期の診断, 治療が必要である.
著者
鴨川 賢二 戸井 孝行 岡本 憲省 奥田 文悟
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.354-357, 2009 (Released:2009-07-08)
参考文献数
10
被引用文献数
3

症例は50歳男性で,多発性硬化症(MS)の進行により,外斜視をともなう両側内側縦束(MLF)症候群が持続した.単眼で固視すると他眼の外斜視が誘発される交代性外斜視を呈しており,wall-eyed bilateral internuclear ophthalmoplegia(WEBINO)に合致していた.MRIではT2強調画像にて橋被蓋傍正中部に高信号をみとめた.本邦でのWEBINOの報告はほとんどが脳血管障害の急性期にみられたものであり,MSの報告はきわめてまれである.本例のWEBINOの機序として,橋下部被蓋傍正中部の脱髄病変による両側MLF障害と持続的な傍正中橋網様体のimbalanceの可能性が示唆された.
著者
冨田 仁美 奥田 真也 松本 雄志 鴨川 賢二 岡本 憲省 奥田 文悟
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.340-345, 2012 (Released:2012-09-26)
参考文献数
19

症例は65歳,男性.突然の左片麻痺と構音障害にて当科へ入院となった.左片麻痺のほかに左核上性顔面神経麻痺,左舌下神経麻痺,頸部以下の左半身で深部感覚障害がみられた.頭部MRIでは右延髄上部から中部の腹側から被蓋部に梗塞巣を認めた.3週間後も左舌下神経麻痺は続いたが,線維束攣縮や筋萎縮はみられないため,左核上性舌下神経麻痺と診断した.本例の顔面神経麻痺と舌下神経麻痺は病巣と反対側にみられたため,両神経核への核上性線維が延髄において交叉する前に障害されたと推測された.核上性の顔面神経および舌下神経線維の交叉部位には延髄上部から下部にかけてバリエーションが存在することが示唆された.
著者
渡部 真志 二宮 怜子 近藤 総一 鴨川 賢二 冨田 仁美 藤原 聡 奥田 文悟 岡本 憲省
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
2020

<p><b> 要旨:</b>症例は41 歳男性.習慣的に行っていた頸部回旋直後に後頸部痛を自覚した後,ふらつき,呂律困難,右半身の脱力が順に出現した.意識はJCS 1 で,右同名半盲,構音障害,右片麻痺,左上下肢の運動失調がみられた.頭部MRI,DWI で左小脳と左視床内側に急性期脳梗塞を認めた.頭頸部MRA ならびに造影CT にて右椎骨動脈解離による動脈原性塞栓症と診断した.脳血管撮影では左回旋位で右椎骨動脈の血流の途絶がみられた.撮影中,右頸部回旋時に後頸部痛を生じた.左椎骨動脈に狭窄性変化と右回旋位で血流の途絶を認めた.検査後から一過性の浮動感が出現した.翌日の頭部MRA にて新たに左椎骨動脈解離を認めたため,両側椎骨動脈解離によるbow hunter 症候群(BHS)と診断した.抗血小板剤内服と頸部硬性カラー装着にてBHS に関連する症状は速やかに改善した.頭蓋頸椎移行部における椎骨動脈解離を疑って脳血管撮影を行う際には,頸部回旋により新たな動脈解離を来す恐れがあることに最大限の注意を払うべきと考える.</p>
著者
武田 正中 立花 久大 奥田 文悟 川端 啓太 杉田 實
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.363-368, 1993-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
20
被引用文献数
6 9

パーキンソン病 (PD) 患者を痴呆群と非痴呆群とに分け, 事象関連電位 (ERP) と視覚誘発電位 (VEP) を測定し, それぞれ比較検討した. 対象はPD痴呆群9例, 非痴呆群19例, 正常対照群28例である. ERPは聴覚刺激の oddball 課題を用い, VEPは図形反転刺激を用いた. その結果PD痴呆群ではERPのN200, P300潜時およびVEPのP100潜時は正常者群およびPD非痴呆群に比し有意に延長していた. 正常者群とPD非痴呆群との間にはERP, VEPともに有意な差は認めなかった. またPD痴呆群でERPのN200潜時とVEPのP100潜時の間に有意な相関関係が認められた. P300潜時とVEPのP100潜時との間にもその傾向が見られた. 以上の結果より, PD患者においてはERPのP300潜時のみでなくN200潜時も認知機能障害の指標となりうることが示唆された. またVEPのP100潜時の延長は, 網膜レベルよりも中枢の視覚伝導路での障害を示唆するものと考えられた. さらにPD痴呆群では視覚刺激に対する大脳反応性の低下は認知機能や情報処理機能の低下とある程度並行して起こっていくことが示唆された.
著者
鴨川 賢二 奥田 真也 冨田 仁美 岡本 憲省 奥田 文悟
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.485-488, 2010 (Released:2010-07-29)
参考文献数
10

症例は75歳男性である.短時間の失声と無動をくりかえすため入院した.垂直方向の眼球運動制限,頸部・体幹の筋強剛,四肢のパラトニア,開脚小刻み歩行を呈していた.発作時には発語と動作が停止し,強直肢位をとり,吹き出し呼吸となって1分以内に回復した.発作中の意識は保たれていた.頭部MRIは進行性核上性麻痺とラクナ梗塞を示唆する所見であった.脳波では前頭葉徐波がめだち,123I-iomazenil SPECTの3D-SSPで補足運動野近傍の集積が低下していた.カルバマゼピンにより発作は消失した.陰性運動現象を主徴とする補足運動野発作が高齢者においても発症しうることには留意すべきである.