著者
山崎 泰助 松村 外志張 築山 節 常盤 孝義
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3-4, pp.137-145, 2006-12-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
18

エレウテロサイドEは、エゾウコギ(Acanthopanax senticosus)の主要活性成分であるリグナン系化合物であり、抗疲労、抗ストレス、胃潰瘍抑制ならびに免疫機能の向上などの作用を有する。しかし、抗炎症作用についてはこれまでほとんど検討されていない。本研究では、エレウテロサイドEの抗炎症作用について明らかにする目的で、ヒト滑膜肉腫細胞株SW982にIL-1β を添加した細胞培養系を用い、エレウテロサイドEの炎症性タンパクの遺伝子発現ならびに転写因子AP-1、N-κBのDNA結合活性におよぼす影響について検討した。エレウテロサイドEは、SW982細胞の増殖ならびに形態に対し、ほとんど影響を示さなかった。対照として用いたイソフラキシジンおよびエレウテロサイドBと比較して、エレウテロサイドEはIL-6、MMP-1、COX-2の遺伝子発現およびPGE2の産生をより低濃度で抑制した。加えてエレウテロサイドEは、MMP-1プロモーター活性、AP-1およびNF-κBのDNA結合活性を抑制した。イソフラキシジンではこれらの活性の抑制は認められなかった。以上の結果、エレウテロサイドEは、AP-1およびNF-κBのDNA結合活性を阻害することにより各種炎症性タンパクの遺伝子発現を抑制するものと考えられる。
著者
松村 外志張
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.94-112, 2021

<p>臓器移植などの医療目的や基礎研究ならび産業利用のための人体臓器, 組織, 細胞(以下ヒトモノ)の重要性は急速に高まり, かつ実験技術の飛躍的な進歩はヒトモノが有する生命性を拡大し新たな問題を生み出している. わが国においても, 臓器移植法の改正等, 部分的な取組みはなされてはいるものの, 全体としてみるとき, 自給体制の整備が遅れ, 移植治療の機会の逸失や研究資源を海外からの恵与に依存する状態が続いている. このことがヒトモノという概念を顧慮する機会を逸し, 社会的な整備の遅れを招いていると考えられる. 筆者はこれまでヒトの培養細胞を用いて基礎研究や産業応用を行って来た中で, 出発素材となるヒトの臓器·組織の供給面の検討なくして研究開発は完結しないとの強い信念を抱いてきた. 本稿では, ヒトモノとは何か, そして社会の中でのヒトモノの位置付けを論じた上で, ヒトモノにまつわる問題の解決を目指して, 法規の背景をなす倫理原則をあらためて検討した. 過去の非倫理的な人体実験に対する反省に端を発し, その結晶ともいえるベルモント報告書の倫理原則3ヶ条, すなわちヒトへの敬意原則, 仁恵原則, 正義の原則を尊重することを基本とする. ここで新たに, 敬意原則に「ヒトモノへの敬意」を含め, 正義原則に「ヒトモノの取扱い目的による差別をしない」ことを含める. さらに, ヒトモノを生物多様性に関する国際条約の対象として保護ならびに監視することを第4原則に, そしてヒトモノに対する所有権を認めず, 社会的な求めに応じて加えた加工による付加価値を除き, 授受に利益を付加しない無償性原則を第5原則として付け加えた. これら5ケ条の倫理原則を担保するためには, 必ずしも新たな法規の制定を必要としない部分もあると考えられるが, 制定が不可避な部分もあると考えヒトモノ基本法私案として, いくつかの考えられる方策とともに提案した. ヒトモノ基本法の制定は, わが国におけるヒトモノ取扱いの先進性を世界に宣言し, 今後時間を掛けて現行法規の調整を順次進めることによって, 国内問題を解決に導くとともに, 国際的な協力の輪に入る機会につながるものと期待する.</p>
著者
松村 外志張
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.129-142, 2005-04-10
参考文献数
25
被引用文献数
2