著者
伏見 和郎 難波 正義
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.181-187, 1997-12-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
30

SV40(Simian virus40)はポリオワクチンを産生していたアカゲザル腎臓細胞に感染しているヴイルスとして発見された。そしてこのウイルスは八ムスターなどの動物の腫瘍を発生させることが見出されたので、ヒトにおいても癌ウイルスとして働くことが懸念されていた。その後の研究で、ヒト細胞の不死化に密接に関係していることがわかってきたが、ヒトの癌発生との関係はよくわからず否定的であった。最近、ヒト癌でSV40の遺伝子が検出され、ヒトの癌化との関係が示唆されるようになってきた。今回ヒト癌におけるSV40の関与について現状を紹介する。
著者
諫田 泰成 中村 和昭 山崎 大樹 片岡 健 青井 貴之 中川 誠人 藤井 万紀子 阿久津 英憲 末盛 博文 浅香 勲 中村 幸夫 小島 肇 関野 祐子 古江-楠田 美保
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.13-19, 2017 (Released:2017-05-24)
参考文献数
8

近年、細胞培養に関連する技術の急速な開発に伴い、創薬研究、再生医療への応用など、細胞培養が貢献する分野が拡大している。欧米では細胞培養の再現性、信頼性、的確性を確保するうえで、細胞培養の基本概念を研究者・実験者間で共有することの重大性が認識され、Good Cell Culture Practice(GCCP)を作成することにより、細胞培養技術を一定の水準に維持する努力がなされている。我が国の研究者・実験者においても、細胞培養における基本概念を共有すべきと考え、「細胞培養における基本原則」案を作成した。本基本原則案は、培養細胞の脆弱性、入手先の信頼性と使用方法の妥当性、汚染防止、適切な管理と記録、作業者の安全と環境への配慮、の5条項から構成されている。この基本原則の概念が細胞培養を行うすべての研究者・実験者により共有され、日本の細胞培養技術が上進し、細胞培養技術を用いた研究の信頼性が向上することを期待する。
著者
中村 和昭 諫田 泰成 山崎 大樹 片岡 健 青井 貴之 中川 誠人 藤井 万紀子 阿久津 英憲 末盛 博文 浅香 勲 中村 幸夫 小島 肇 伊藤 弓弦 関野 祐子 古江-楠田 美保
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-131, 2018 (Released:2018-09-08)
参考文献数
4

近年、細胞培養に関連する技術の急速な開発に伴い、創薬研究、再生医療への応用など、細胞培養が貢献する分野が拡大している。培養細胞を利用する上において重要な点の一つとして、適切な状態の細胞を用いることが挙げられる。そのためには、使用する細胞の状態を把握することが重要である。その手段として、生きている細胞を非侵襲的に観察できる倒立位相差顕微鏡が汎用されている。倒立位相差顕微鏡による観察から得られるのは形態情報や細胞密度のみではあるものの、その観察は培養細胞を用いた実験の信頼性と再現性を担保するために有用な手段である。生きている細胞の観察の手法には様々な留意点がある。そこで、細胞培養の観察における基本概念を共有すべきと考え、「細胞培養の観察の基本原則」案を作成した。本基本原則案は、顕微鏡観察に先立つ細胞の目視、低倍率・高倍率での倒立位相差顕微鏡観察、観察のタイミング、適切な記録と保存などに関して7条項から構成されている。この基本原則の概念が共有され、細胞培養技術を用いた研究の信頼性が向上することを期待する。
著者
難波 正義
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2+3+4, pp.109-116, 2009 (Released:2010-03-14)
参考文献数
26

約1世紀前に、生きた組織や細胞を動物の体外に取り出した研究が始まった。即ち、組織培養あるいは細胞培養法そのものの研究、あるいは、それらの技法を用いた研究である。この研究の流れの中で、1)組織・細胞培養の特性を生かして行われた研究でノーベル賞に輝いた研究、2)組織・細胞培養の基礎的経験からノーベル賞につながったと推定される研究、3)その他の特記できると私が考える細胞培養の研究、などについて取り上げてみたい。
著者
若原 正己
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.47-52, 1991-11-20 (Released:2012-11-13)
参考文献数
19

アフリカツメガエル受精卵を第1卵割前に短時間斜めに傾けて放置すると将来の背腹軸が逆転するので、背腹軸の形成には重力依存の機構があることが分かる。このことは受精卵を第1卵割前に軽く遠心する実験でも確かめられる。適当な遠心条件を選べば、遠心卵から大量の双軸胚が得られる。受精卵を正常状態(1g)、過重力(3g)、模擬無重力(μg)下で飼育し、卵割パターン、原ロ陥入の様子、形態形成などを比較した。その結果、重力は第3卵割面の位置に大きな影響を与えることが分かった。3g胚では、第3卵割面は極端に動物極側に生じ、μg胚では赤道付近に生じる。その後の形態形成について特徴点を述べた。また、重力は卵割パターンを変更させることにより始原生殖細胞の発生にも影響を及ぼす。
著者
山崎 泰助 松村 外志張 築山 節 常盤 孝義
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3-4, pp.137-145, 2006-12-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
18

エレウテロサイドEは、エゾウコギ(Acanthopanax senticosus)の主要活性成分であるリグナン系化合物であり、抗疲労、抗ストレス、胃潰瘍抑制ならびに免疫機能の向上などの作用を有する。しかし、抗炎症作用についてはこれまでほとんど検討されていない。本研究では、エレウテロサイドEの抗炎症作用について明らかにする目的で、ヒト滑膜肉腫細胞株SW982にIL-1β を添加した細胞培養系を用い、エレウテロサイドEの炎症性タンパクの遺伝子発現ならびに転写因子AP-1、N-κBのDNA結合活性におよぼす影響について検討した。エレウテロサイドEは、SW982細胞の増殖ならびに形態に対し、ほとんど影響を示さなかった。対照として用いたイソフラキシジンおよびエレウテロサイドBと比較して、エレウテロサイドEはIL-6、MMP-1、COX-2の遺伝子発現およびPGE2の産生をより低濃度で抑制した。加えてエレウテロサイドEは、MMP-1プロモーター活性、AP-1およびNF-κBのDNA結合活性を抑制した。イソフラキシジンではこれらの活性の抑制は認められなかった。以上の結果、エレウテロサイドEは、AP-1およびNF-κBのDNA結合活性を阻害することにより各種炎症性タンパクの遺伝子発現を抑制するものと考えられる。
著者
新居田 彩 小谷 悠子 田中 寿美子 浅田 伸彦 難波 正義
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2-3, pp.107-113, 2005 (Released:2012-11-13)
参考文献数
10

前回の研究で水道水で作ったイーグル最小基礎培地(Eagle's Minimum Essential Medium:MEM)の培養細胞に対する傷害性の有無を報告した。すなわち、その報告では、水道水培地でも培養細胞を増殖維持でき、水道水の細胞に対する傷害性は少ないと我々は結論した。今回はこの事実をさらに確認するために実験を行ったところ、前回の結果と一部一致しない事実が分かったので報告する。実験方法は、水道水の細胞傷害を調べるために、前回と同様に水道水に溶かしたMEMに非必須アミノ酸と10%胎児牛血清を添加した培地を用いた。使用した細胞は樹立化されたヒト肝細胞(OUMS-29)である。細胞の傷害性は主にコロニー形成法で検討した。また、細胞をコンフルエント状態(生体状態に近い条件)にした場合での水道水培地の細胞傷害を調べた。この場合は傷害された細胞から培地中に遊離されるLDH活性を測定した。さらに、今回は水道水に含まれる塩素量を測定し、塩素量と細胞傷害の関係を検討した。その結果、1)水道水の採取日の違いにより、細胞傷害が弱い場合と強い場合があること、2)水道水中の塩素量は細胞の傷害には影響を与えないこと、3)細胞がコンフルエントの状態では傷害が見られないことが判った。以上の結果を総合すると、水道水の人体に及ぼす傷害性は低いと考えられる。しかし、今回の実験は水道水の細胞に対する短期的影響について調べたものなどで、長期的影響については今後の検討が必要と思われる。
著者
小原 有弘 大谷 梓 小澤 裕 塩田 節子 増井 徹 水澤 博
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.159-163, 2007 (Released:2007-11-30)
被引用文献数
1

マイコプラズマは自己増殖能を持つ、細菌の1/10程度の大きさの微生物で培養細胞と共存して増殖する汚染しやすい微生物とされているが、培地が濁ることがないので混入に気付きにくい。しかし、マイコプラズマ汚染が研究に及ぼす影響は多大であり、サイトカインの発現異常、染色体の異常、細胞死などを引き起こし、その混入を軽視することはできない。そこで日本組織培養学会細胞バンク委員会と JCRB 細胞バンクは協力して、マイコプラズマ簡易迅速検査キット「MycoAlert®」を利用したマイコプラズマ汚染に関する全国実態調査を開始し、今までに11大学、2国立研究所、3企業の協力が得られている。既に1500検体程度の解析を実施したが、平均汚染率は22.4%という結果を得たのでその概略を中間報告として紹介する。今後我々は、さらに調査を進めると共に、細胞に汚染していたマイコプラズマ種の同定も行い汚染源の特定なども行いながら、マイコプラズマ汚染の予防法や除去法についての紹介も今後行っていきたいと考えている。
著者
鎌谷 直之 川本 学 北村 豊 針谷 正祥 奥本 武城 隅野 靖弘
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.71-80, 2004

日本のヒト遺伝子解析研究に関する倫理指針を遵守して、研究計画について倫理審査委員会の事前承認を得た後、日本人ボランティアに十分な説明をし、自由意志による同意を得て末梢血液試料を収集した。血液試料は細胞株化研究に使用する前に新しく開発した匿名化プログラムを用いて連結不可能匿名化した後、Epstein-Barr virus処理して996人のB細胞株を樹立した。樹立した全細胞株を公的な国立医薬品食品衛生研究所と(財)ヒューマンサイエンス振興財団の細胞バンクに寄託し、2003年に細胞株の分譲が開始された。ヒト遺伝子解析研究に利用できるこれらの細胞株の分譲は、ヒト遺伝子解析研究の進展に貢献すると期待される。
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.23-24, 2012 (Released:2013-08-01)

1 0 0 0 OA 記念講演

出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.31, 1989 (Released:2012-11-13)
著者
加納 良男 遠藤 彰 難波 正義
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.55-65, 1992-03-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
19

細胞の老化と不死化は密接に関連している。ヒトの細胞は、堅固な細胞老化機構をもっていて細胞の不死化が非常におこりにくく、それが細胞の不死化機構解明を困難にしている、反対にマウスなどのローデントの細胞は容易に不死化するため不死化の原因を追及しにくい。さらにマウス等においては、myc、p53、SV40Tなどの不死化遺伝子があるが、それらがどのようなメカニズムでマウスの細胞を不死化させるのか全くわかっていない。一方、我々はヒトにおいてマウスと同じくらい高頻度にSV40Tで不死化する細胞(11p-)を見い出した。使用した2種類の11p-細胞は、老化と不死化の接点にあるクライシスに、それぞれ異なった異常を示した。第一の種類の異常は、クライシスにも多数の細胞が存在していてSV40Tによって正常の7倍の頻度で不死化するe一般にSV40Tを導入した正常細胞のクライシスでは細胞数はきわめて少なくなる。第二の異常は、クライシスが継代の若い時期から始まり、正常の50倍もの不死化率を示した。クライシスは細胞が老化してくると、老化遺伝子が発現することでひき起こされると考えられており、高い自然染色体異常と突然変異をもつ。SV40Tなどのがん遺伝子はクライシスを高め、その結果老化遺伝子自身におきる突然変異もひき上げると考えられる.そして、相同染色体に別々に2個存在する老化遺伝子に2つとも突然変異が生じて、その老化遺伝子が不活化し、老化にともなう細胞増殖の停止が起こらなくなった現象がヒト細胞の不死化と考えられる。

1 0 0 0 OA セッション2-1

出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.203-228, 1999-09-30 (Released:2012-11-13)
著者
Rieko OYAMA Mami TAKAHASHI Fusako KITO Marimu SAKUMOTO Yoko TAKAI Kumiko SHIOZAWA Zhiwei QIAO Shunichi TOKI Yoshikazu TANZAWA Akihiko YOSHIDA Akira KAWAI Tadashi KONDO
出版者
The Japanese Tissue Culture Association
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-02-15)
参考文献数
57

Background: Pleomorphic rhabdomyosarcoma (pRMS) is an aggressive mesenchymal malignancy affecting adults, and its characteristics and clinical behaviors differ considerably from those of embryonal and alveolar RMS subtypes. A therapeutic strategy for pRMS has not been established, and its prognosis remains poor. Further investigations are therefore required to improve the clinical outcomes associated with this disease. Patient-derived cancer models are essential tools for basic and translational research, and numerous models of different RMS subtypes have been established. However, only two pRMS cell lines are available, and no xenograft model of this disease has been developed. Hence, the objective of this study was to establish patient-derived pRMS models.Methods: We obtained tumor tissues from a 73-year-old pRMS patient who had not received chemotherapy or radiotherapy. We prepared patient-derived xenografts (PDXs) from these tumor tissues and stable patient-derived cell lines from both the original tumor and a PDX. The established models were then characterized, and their novelty was confirmed by short tandem repeat analysis.Results: The PDX tumors were histologically similar to the original source tumor. Moreover, the established cell lines exhibited morphological features resembling those of RMS, the ability to form spheroids, constant growth, and invasive behavior. By screening an anti-cancer drug library, we identified mitoxantrone, ponatinib, romidepsin, vandetanib, belinostat, bortezomib, and vorinostat as potential drugs for pRMS treatment.Conclusions: Our novel pRMS models will be useful research resources, providing an opportunity for in-depth investigations of the molecular basis and treatment of this disease. Clinical trials for the drugs showing anti-proliferative effects on pRMS cells may be worth considering in further studies.
著者
Yoshitsugu OHNUKI Takumi KONDO Hiroshi KUROSAWA
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.21-29, 2017 (Released:2017-05-24)
参考文献数
21

Rho-associated protein kinase (ROCK) inhibitor, Y-27632, is an indispensable chemical molecule to maintain the viability of single-dissociated human induced pluripotent stem cells (hiPSCs) and to form cell aggregates in floating cultures. In this study, we investigated the effect of Y-27632 on the cardiac differentiation of the cell aggregates of hiPS cell line, 201B7. When Y-27632 was not added to the floating culture, the dissociated hiPSCs died and no cell aggregates were formed. The presence of greater than 10 μM Y-27632 was required to form spherical cell aggregates from the dissociated hiPSCs. However, Y-27632 used in the floating culture of the dissociated hiPSCs to form cell aggregates exhibited an inhibitory effect on cardiac differentiation in the adherent culture of cell aggregates. When 30 μM Y-27632 was added to the floating cultures, the extensibility of outgrowth from the cell aggregates was relatively lowered, and the initial time of contraction (the generation of beating cardiomyocytes) was markedly delayed in the adherent cultures. Moreover, the expression levels of the early cardiac differentiation-related genes of NKX2.5 and TNNT2 were decreased with increasing Y-27632 concentration. These results indicate that Y-27632 applied to the floating cultures for cell aggregate formation adversely affected the early cardiac differentiation in the following adherent cultures, although there was no influence on the final cardiac differentiation levels.

1 0 0 0 OA シンポジウム

出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.48-57, 2000-06-30 (Released:2012-11-13)
著者
岩政 輝男
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.133-141, 1987-03-01 (Released:2007-11-22)
参考文献数
11