著者
村田 玖美 松村 沙耶 升井 洋至
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】人が食事をするときの重要な因子としては,嗜好性,栄養性などが挙げられる。現在ではさらに健康志向により,各種の生体調節機能が食品に求められている。食後の急激な高血糖を防ぐ機能性因子を食品中から検索し,活用することは糖尿病の予防,そして治療に役立つと考えられる。本研究では,種々の野菜を用いて食後高血糖の上昇を抑制すると考えられている糖質分解酵素阻害物質と調理操作との関連性を明確にする基礎研究として検討した。<br>【方法】試料は,ショウガ,ニンニク,ニラ,ハクサイ,タマネギを対象とした。生鮮試料をみじん切り,ミキサー(Panasonic MJ-M32)等による摩砕抽出(蒸留水)を行った。抽出液を凍結乾燥(EYELA FDU-830)したものを抽出凍結試料とし,活性測定まで-80℃で保存した。糖質分解酵素の阻害活性はラット腸管アセトンパウダー(Sigma-Aldrich Japan)より調製した粗酵素液(α-グルコシダーゼ)を用い,スクロースを基質として分解活性の阻害を指標として測定を行った。さらにSephadexG-25(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)により分画したものについても阻害活性測定を行った。<br>【結果】ニラ,ハクサイ抽出試料において,濃度依存的にラット腸管スクラーゼへの阻害活性がみられた。また,タマネギ抽出試料では阻害活性の傾向がみられた。ショウガ抽出試料はエタノール処理した画分で濃度依存的に阻害活性が見られた。ヒト腸管スクラーゼと相同性が高いとされているラット腸管スクラーゼに対して阻害活性が認められたニラ,ハクサイ,ショウガについては,ヒトの腸管内で作用する可能性が示唆される。SephadexG-25によるカラム分画では食材ごとに挙動の違いが見られ,阻害画分について現在検討中である。また,加熱操作処理による阻害活性についても検討中である。