著者
新井 智 松永 貴寛 本藤 祐樹
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.120-130, 2023-11-20 (Released:2023-11-30)
参考文献数
30

環境キャラクターは国や自治体における環境活動の広報のために頻繫に利用されている。しかし,環境キャラクターが実際に人々の意識や行動に与える効果の検証やメカニズムの解明はほとんど行われていない。本研究の目的は,環境キャラクターが擬人化を通して人々の太陽光発電(PV)の受容に与える影響について明らかにすることである。擬人化とは,人間以外の存在に対して感情や意思のような人間的な特性を知覚することであり,環境配慮行動意図との関連が既往研究で指摘されている。本研究では,環境キャラクターとして長野県飯田市のNPO法人で作成された「さんぽちゃん」を取り上げ,その擬人化が人々の環境意識やPVの受容にどのような影響を与えているのかを質問紙調査に基づき分析している。質問紙調査の結果を統計的に分析し,先行研究で扱われている一般的な擬人化とは類似しているが異なる市民的擬人化という概念を新たに提示している。市民的擬人化は,環境キャラクターを同じ地域に住む市民として認識する程度であり,この程度が高い人はそうでない人に比べて,PVを受容することが示されている。