著者
田邉 勝巳 松浦 寿幸
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.77-97, 2006-08

本研究は,株式市場に上場している電機機械・輸送用機械産業の製造事業所データを用いて,1970年から1998年までの工場の立地選択の要因分析を行った。日本全国の事業所データと企業データを接続し,立地の空間的要素として主要な交通施設(空港,港湾,新幹線駅)までの移動時間,本社と各工場の移動時間を考慮している。工場の立地分析は既存研究でも数多く取り組まれてきたが,交通に関連する要因を考慮しつつ,全国の事業所データを用いた分析は少ない。地方自治体は,一般道路や空港,港湾といった交通インフラの整備に力を入れてきたが,その目的の1つに工場誘致による地域経済の発展がある。当研究は,こうした公共事業が企業誘致にどの程度の効果を持っていたのか,そして近年,どの様に変化したのかを明らかにする。有価証券報告書等により工場の設立年・所在地を特定化し,離散選択分析の一種であるコンディショナル・ロジットを用いて実証分析を行った。分析の結果,最寄りの空港,港湾,新幹線駅まで一定の時間内に到達できることが立地要因の1つであることが分かった。更に,本社までの移動時間が立地選択において最も重要な要因であり,高速道路の延伸は特に本社により近い地域の立地確率を高めることが明らかになった。