著者
松田 三恵子 杉山 博史 土井 美和子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.132-139, 2004-01-01
被引用文献数
20

携帯電話の普及により,道案内サービスが幅広く利用されるようになってきた.道案内サービスの普及につれ,従来の最短距離経路のみの案内ではなく,よりきめ細かい経路案内,特に歩行者の身体能力や子供などの同伴者や荷物の有無に対応した経路案内への要求が高まっている.本論文では,歩行者の経路への嗜好性を取り入れた経路生成について述べる.歩行者の身体状況などに応じて変化する歩行者の経路への嗜好性を経路生成に反映できるようにするために,延べ269名に対し,計2回のアンケートを行った.これらのアンケート結果から,歩行者は「距離」以外に「安全性」や「快適性」を重視していること,特に60歳以上のユーザは「安全性」と「快適性」双方を重視していること,また「男性」より「女性」の方が階段を避ける「快適性」を重視していることも判明した.また経路への嗜好性を取り入れるには,従来の道路データ以外に,歩道や坂道などの詳細な経路探索条件が必要であることが判明した.これらの経路探索条件を反映した経路探索パラメータを導入し,身体状況などに応じて変化する歩行者の嗜好を反映した経路案内生成方法を実現した.実際に渋谷駅周辺の歩道や坂道などの詳細情報を収集し,歩行者の嗜好に合わせた経路を生成できることを確認した.