著者
江藤 哲人 松田 恵里 伊藤 憲和
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.53, pp.17-27, 2001-07-25 (Released:2010-05-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2

房総半島中部西端部の中部更新統長浜砂礫層および三浦半島中部東端部の上部更新統走水礫層の礫は主に中・古生界に由来する古期岩類で構成され, 次いで中新統の緑色凝灰岩類およびそれに随伴する火成岩類で構成される. そのほか, 第三系堆積岩起源の礫が少量含まれる. 中期~後期更新世の古地理などから判断して, 古期岩類の礫は主として関東山地に, 緑色凝灰岩類および火成岩類は主に丹沢山地にそれぞれ由来すると推定される. 両層堆積期に両山地は大量に礫を供給し得る隆起が起こったと推定できる. 両層の礫種組成には明らかな相違が認められ, 走水礫層の古流向と合わせ考えると, 走水礫層の礫を長浜砂礫層に起源するとみなす見解は否定される. 長浜砂礫層の礫種組成には層位的変化が認められ, 一部の層準に目立つ第三系堆積岩起源の礫は嶺岡山地に由来すると推定され, 嶺岡山地の一時的な隆起を示すと考えられる.