著者
宮田 公佳 松田 政行
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.184, pp.99-155, 2014-03

博物館は文化財及び歴史資料のみならず,写真,書籍,調査研究報告書,論文等に至るまで,多種多様な資料を有している。後世に永く伝えられるべきこれらの資料は,それ自体が情報であるだけでなく,新たな情報を獲得するための情報資源である。近年では博物館情報資源の多くがデジタル化されており,その有効活用のためには情報機器や各種技術が必要となっている。高性能かつ安価な情報機器と高度な関連技術を用いることによって,従来では実現困難であった博物館情報資源の活用方法が見出されている一方で,技術的に可能なことが適法であるとは限らない状況が生じうる。したがって,博物館情報資源を活用するためには,技術的な課題と法律的な対処方法との両立が求められる。そこで本論文では,両者を比較対比することで相互の関連性について理解を深め,さらに博物館情報資源を機能的に活用する手法について議論する。本論文では,画像技術と著作権法に着目し,博物館情報資源の活用における具体例を提示しながら議論を進める。画像情報の果たす役割は多岐に及び,その実現手段は多様となるが,入力,処理,出力という三要素と,その連携である保存・活用の段階に分類することで情報資源の活用手段を構造化することは有用である。デジタル情報の活用においてはコピーの作製が重要であり,コピーと改変に関し著作者の権利として定めている著作権法の理解が不可欠である。博物館情報資源活用の具体例を通して,技術と著作権に関する個別問題に対処するだけでなく,技術と著作権法の構造的理解を踏まえた総合的判断力の醸成に寄与するための考察を行う。