著者
宮田 公佳 竹内 有理 安達 文夫
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.321-352, 2003-10-31

今日,わが国においても観客の視点に立った博物館運営の重要性が認識されつつある。それを実現するには,観客の側からみた博物館の評価が欠かせないものとなる。これまで以上に観客について知ること,来館者の博物館体験について知ることが求められており,国立歴史民俗博物館においても,観客調査を試み始めている。本論文では,当館で実施している様々な観客調査の中から来館者の観覧行動を分析した調査を取り上げ,その結果について報告する。観覧行動の具体的な調査方法と分析方法について検討を行い,来館者の見学順路,各展示室の在室時間および在館時間,そして展示室別入室者数の時間的推移を定量的に分析することによって,博物館の建物の構造や展示室の配置が来館者の観覧行動に与える影響などを明らかにした。
著者
宮田 公佳
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.180, pp.209-229, 2014-02

博物館等に収蔵されている資料のみならず,撮影された資料画像あるいは調査研究の成果である報告書等もまた情報資源であり,これらの情報資源から抽出された情報が展示や新たな研究へと活用されている。情報資源を有効活用するためには,情報の抽出,処理,利用に関する手段が必要であり,画像情報や文字情報を個別対象とした先行研究が行われている。画像と文字は情報種別としては異なるが,果たすべき役割には共通点が存在するため,両者の特徴を融合することで相乗効果を発揮し,情報資源をより有効活用することができると考えられる。膨大な情報を有効活用する手段として,データベースが広く用いられている。一般的に,データベースは検索語の入力によって検索が行われるため,検索語に関する事前知識が必要となる。博物館等が提供するデータベースには専門的な用語が多く入力されているため,必然的に利用者には専門知識が要求されることになり,結果として専門家のためのデータベースとなりやすい。そこで本研究では,画像情報と文字情報とを融合させることで,専門的な事前知識の有無に影響を受けにくい情報活用手段としてのデータベース構築について議論する。対象資料は洛中洛外図屏風歴博甲本であり,描かれている人物に関して抽出された文字情報と,デジタル化された資料画像とをデータベースという形式で融合する手法を検討する。博物館展示では,資料解説等の役割を担うデジタルコンテンツが運用されることがあるが,本研究ではデータベースをデジタルコンテンツ化することで,利用者に対してデータベースであることを意識させないインタフェイス設計についても検討を行った。本論文における対象資料は一点のみであるが,情報活用手段を入力,処理,出力の三要素に分解することで一般化を試みており,類似資料の活用においても本論文におけるデータベース構築手法は応用可能である。Not only artifacts stored in museums but also images of artifacts and related literatures are information resources. Information obtained from the information resources by researches and investigations will be used for exhibitions and further researches. Suitable methods to acquire, process and utilize the information are required to enhance effectiveness of the information resources. It is considered that combined use of image and text information is one of the solutions to achieve it.Databases are well known as a method to manipulate huge volume of information. In general, databases require query words to retrieve desired information from databases. However, users are forced to select appropriate query words for the retrieval. In addition, because databases served by museums store a lot of technical terms, users have to learn such difficult words in advance. In this research, a method to integrate image and text information is discussed to overcome this difficulty for a museum exhibition and as an Internet service. The item focused on in this research is a pair of folding screens named "In and around Kyoto, Rekihaku version A." People drown in the screens are investigated and obtained information is stored as text information. The folding screens are digitized and the digital images are used to obtain the people information for a historical research project. A database is designed as a tool for integrating image and text information, and the database is used in the exhibition and the service through the Internet. Methodology to develop the database can be used for other items stored in museums because the methodology is utilized by resolving complicated procedure into three elemental procedures such as acquisition, process and output.
著者
宮田 公佳 松田 政行
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.184, pp.99-155, 2014-03

博物館は文化財及び歴史資料のみならず,写真,書籍,調査研究報告書,論文等に至るまで,多種多様な資料を有している。後世に永く伝えられるべきこれらの資料は,それ自体が情報であるだけでなく,新たな情報を獲得するための情報資源である。近年では博物館情報資源の多くがデジタル化されており,その有効活用のためには情報機器や各種技術が必要となっている。高性能かつ安価な情報機器と高度な関連技術を用いることによって,従来では実現困難であった博物館情報資源の活用方法が見出されている一方で,技術的に可能なことが適法であるとは限らない状況が生じうる。したがって,博物館情報資源を活用するためには,技術的な課題と法律的な対処方法との両立が求められる。そこで本論文では,両者を比較対比することで相互の関連性について理解を深め,さらに博物館情報資源を機能的に活用する手法について議論する。本論文では,画像技術と著作権法に着目し,博物館情報資源の活用における具体例を提示しながら議論を進める。画像情報の果たす役割は多岐に及び,その実現手段は多様となるが,入力,処理,出力という三要素と,その連携である保存・活用の段階に分類することで情報資源の活用手段を構造化することは有用である。デジタル情報の活用においてはコピーの作製が重要であり,コピーと改変に関し著作者の権利として定めている著作権法の理解が不可欠である。博物館情報資源活用の具体例を通して,技術と著作権に関する個別問題に対処するだけでなく,技術と著作権法の構造的理解を踏まえた総合的判断力の醸成に寄与するための考察を行う。
著者
西堀 眞弘 渡邊 憲 宮崎 安洋 田中 直文 荒川 真一 千葉 由美 二宮 彩子 大橋 久美子 田中 博 上村 健二 宮田 公佳 中口 俊哉 津村 徳道 三宅 洋一 滝脇 弘嗣 鬼頭 伸一郎 洪 博哲 橋本 憲幸
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.161-166, 2005-12-20
参考文献数
5
被引用文献数
2

マルチスペクトルイメージングは医用画像の色再現の問題を解決できるだけでなく,さまざまな方面への応用により医療に飛躍的な進歩をもたらす画期的な技術である.しかし,あまりに多様な可能性が存在するため,個々の応用形態の実現に至る道筋にはいくつもの分かれ道があり,少しでもアプローチを間違えると行き止まりになってしまう.著者らはマーケティング的な視点からこの迷路のような医療市場に一定の法則を見い出し,それを基に成功の可能性が高い2つのアプローチ法を明らかにした.すなわち各ピクセルに分光反射率を記録できる分光画像技術と,見え方が実物にきわめて近い実物色画像である.前者は人間の視覚能力を超えた形態学的診断につながる技術であり,後者はデジタル画像に基づく形態学的診断の精度向上につながる技術である.なお,前者は多くの開発資源を必要とし,ごく限られた症例において,きわめて画期的な医学的効果を発揮する一方,後者の医学的効果は一定の範囲に留まるものの,必要となる開発資源が比較的少なく,かつ広範な臨床現場において膨大な利用機会が見込まれる.
著者
宮田 公佳
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.180, pp.209-229, 2014-02-28

博物館等に収蔵されている資料のみならず,撮影された資料画像あるいは調査研究の成果である報告書等もまた情報資源であり,これらの情報資源から抽出された情報が展示や新たな研究へと活用されている。情報資源を有効活用するためには,情報の抽出,処理,利用に関する手段が必要であり,画像情報や文字情報を個別対象とした先行研究が行われている。画像と文字は情報種別としては異なるが,果たすべき役割には共通点が存在するため,両者の特徴を融合することで相乗効果を発揮し,情報資源をより有効活用することができると考えられる。膨大な情報を有効活用する手段として,データベースが広く用いられている。一般的に,データベースは検索語の入力によって検索が行われるため,検索語に関する事前知識が必要となる。博物館等が提供するデータベースには専門的な用語が多く入力されているため,必然的に利用者には専門知識が要求されることになり,結果として専門家のためのデータベースとなりやすい。そこで本研究では,画像情報と文字情報とを融合させることで,専門的な事前知識の有無に影響を受けにくい情報活用手段としてのデータベース構築について議論する。対象資料は洛中洛外図屏風歴博甲本であり,描かれている人物に関して抽出された文字情報と,デジタル化された資料画像とをデータベースという形式で融合する手法を検討する。博物館展示では,資料解説等の役割を担うデジタルコンテンツが運用されることがあるが,本研究ではデータベースをデジタルコンテンツ化することで,利用者に対してデータベースであることを意識させないインタフェイス設計についても検討を行った。本論文における対象資料は一点のみであるが,情報活用手段を入力,処理,出力の三要素に分解することで一般化を試みており,類似資料の活用においても本論文におけるデータベース構築手法は応用可能である。
著者
宮田 公佳 Andriyashin Alexey Jaaskelainen Timo Hauta-Kasari Markku Parkkinen Jussi
出版者
THE SOCIETY OF PHOTOGRAPHY AND IMAGING OF JAPAN
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.120-128, 2009

歴史資料・文化財の調査,分析あるいは研究では,分光反射率画像が有効な情報源として期待されている.しかし分光反射率画像は,その取得において従来のRGB画像の場合よりも被写体たる文化財に負担をかけること,取得後のデータ容量が膨大になることなどの問題もあり,現状では必ずしも文化財解析手段として積極的に活用されているという状況にはない.さらに,分光反射率画像が有する膨大な情報の中に,文化財の調査・解析に有効な情報が埋没してしまうことも解決が望まれている課題である.<br>本研究では,クラスタリングと主成分分析を組み合わせる事で分光反射率画像の各画素における特徴抽出を行う手法を応用し,測定によって得られたイコンの分光反射率画像を用いて文化財解析における有効性について検討した.検討手法では,分光反射率画像に対してクラスタリングを行った後,各クラスタにおいて主成分分析を実行する.それによって得られた各クラスタにおける第1主成分のみを用いて,分光反射率の低次元近似を行う.この際,クラスタ数の増加と色差現象の関係を用いてイコンの色彩に関する特徴を抽出し,文化財解析のための特徴抽出への応用について考察した.<br>