著者
松田 敏生 矢野 俊博 丸山 晶弘 熊谷 英彦
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.687-701, 1994-10-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
16
被引用文献数
27 37

各種の有機酸の最小発育阻止濃度を,細菌15株,酵母6株,カビ2株に対して, pHを4.0より0.5刻みで, 7.0まで変化させた培地上で測定した.(1) ギ酸,酢酸,プロピオン酸は良く似た作用を示し,pHが低下すると,抗菌作用も増大した.しかし,乳酸菌に対しては,ギ酸の作用が強く,逆に酵母とカビに対してはギ酸は他の二者と比べて劣った.(2) ソルビン酸の作用は脂肪酸系の有機酸では,酵母に対して細菌に対するよりも強い作用を示す点で特徴的であった.(3) 乳酸は,非常に特徴的な作用を示し,乳酸菌に対しては,すでての菌株を3.0%もくしはそれ以下の濃度で発育を阻止した.しかもその作用は, pHの変化の影響を少ししか受けなかった.しかし,カビと酵母に対しては,乳酸は効果がなかった.(4) リンゴ酸,酒石酸,グルコン酸は強い発育阻止作用を示さなかったが,クエン酸のみが特に乳酸菌の一部に対して阻止作用を示した.(5)アジピン酸は, pHが低いと非常に強い作用を示したが, pH 6.0以上では,ほとんど発育阻止作用が認められず,作用に対するpHの影響が最も強かった.また酵母とカビにはほとんど阻止作用が認められなかった.これより有機酸の抗菌作用は,それぞれの酸に固有の作用があり,作用の発現に当って解離定数の値や,疎水性などに影響されるものと考えられた.